研究課題/領域番号 |
20K16558
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
矢野 康次 北里大学, 薬学部, 助教 (40802955)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脂質トランスポーター / 電気泳動 |
研究実績の概要 |
本研究は「脂質トランスポーター機能評価法を開発し、粥状動脈硬化症の新規リスク指標確立を目指す」ことを目的としている。病巣に蓄積した脂質は脂質トランスポーターを介して病巣から回収され、病態の進展が抑制されている。近年、この機能評価については、トランスポーター側ではなく、トランスポーターと結合する脂質に注目した研究が多く実施されている。しかし、多くの研究において脂質とトランスポーターの結合能は評価されていない。この結合能を同時にかつ簡便に評価することが出来れば、臨床においても有用な指標となることが強く期待される。 本研究は電気泳動を主体とした基本的な実験技術を用いた研究であるため、初年度は脂質トランスポーターを正確に判定量的な評価を行うことが出来る最適な条件を確立することを目的とした実験をおこなった。また、トランスポーターは1つではなく複数をターゲットとすることでより広く評価が可能な手法となるよう目指した。 実験にはJ774.A1、THP1、HepG2、Huh7を用いた。電気泳動は4-20%のグラジエントゲルSDS-PAGEを行い、まずはタンパク質染色を行うことでそれぞれの細胞株に含まれるたんぱく質を可視化した。それら複数のバンドの中から、254kDa付近(ABCA1)、76kDa付近(ABCG1)そして61kDa付近(SR-BI)にも候補となるバンドが検出することが出来た。特にHuh7細胞株は最もバンドが鮮明に検出できたため、有用であることが示唆された。 また、血清から脂質を抽出することを目的としてポリエチレングリコールを血清に加え、遠心分離を行うことでPEG-HDLを作製した。アガロースゲル電気泳動によりHDLのみ抽出されたことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年は新型コロナウイルスによるテレワークの実施や出勤制限などにより、研究開始が遅くなった。また、ウエスタンブロッティングにより検出を行うことを前提として実験を開始したが、複数回の実験を行ったが、目的のバンドが十分に検出することが出来なかった。そこで問題点を洗い出すことを目的として電気泳動後のゲルを銀染色によりタンパク質を可視化した。それぞれの細胞株でバンドは検出されたが、特にHuh7でABCA1と思われるバンドが鮮明に検出された。また、還元処理を行うことにより目的の分子をより鮮明に検出できることも明らかにした。それら電気泳動の実験と並行して、リガンドブロッティングで使用するPEG-HDLの調整を行い、アガロースゲル電気泳動により問題なく分離出来ていることを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
前年の結果から、電気泳動条件および同実験における最適な細胞腫を決定することが出来た。今後予定していた推進方策を以下に記す。前年の結果から得られた同条件にてウエスタンブロッティングを行い、ABCA1、ABCG1そしてSR-BIの蛋白を同定、その後、至適条件において処理を行ったPVDF膜を複数条件で希釈した血清またはPEG-HDLとインキュベーションする。インキュベーション後のPVDF膜は洗浄後、apoA-I等のリポタンパク質に含まれるたんぱく質に対する抗体で可視化する。ABCA1、ABCG1またはSR-BIの分子量サイズにapoA-I等抗体の検出が出来ればPVDF膜上で各種トランスポーターとリポタンパク質が結合していることが示せたことになる。一連の実験条件の中で、ブロッキング処理が必要かどうか、またインキュベーション条件なども検討を行い、最も効率よくかつ十分なバンドが検出できる条件を導出する。これらの条件が決定次第、健常者と心筋梗塞など粥状動脈硬化症の進行した患者を対象として、それぞれの血漿からPEG-HDLを分離し、同条件にて各種トランスポーターとリポタンパク質の結合強度を評価する。以上により、リポタンパク質の抗粥状動脈硬化作用を簡易的に評価できる系を確立する予定であった。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額はウエスタンブロッティングに必要な消耗品や採血に必要な備品および保存容器などを購入する予定であった。
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