本研究は「脂質トランスポーター機能評価法を開発し、粥状動脈硬化症の新規リスク指標確立を目指す」ことを目的としている。病巣に蓄積した脂質は脂質トランスポーターを介して病巣から回収され、病態の進展が抑制されている。近年、この機能評価については、トランスポーター側ではなく、トランスポーターと結合する脂質に注目した研究が多く実施されている。しかし、多くの研究において脂質とトランスポーターの結合能は評価されていない。この結合能を同時にかつ簡便に評価することが出来れば、臨床においても有用な指標となることが強く期待される。 本研究は電気泳動を主体とした基本的な実験技術を用いた研究であるため、まずは脂質トランスポーターを正確に判定量的な評価を行うことが出来る最適な条件を確立することを目的とした実験をおこなった。また、トランスポーターは1つではなく複数をターゲットとすることでより広く評価が可能な手法となるよう目指した。実験にはJ774.A1、THP1、HepG2、Huh7を用いた。電気泳動は4-20%のグラジエントゲルSDS-PAGEを行い、まずはタンパク質染色を行うことでそれぞれの細胞株に含まれるたんぱく質を可視化した。それら複数のバンドの中から、254kDa付近(ABCA1)、76kDa付近(ABCG1)そして61kDa付近(SR-BI)にも候補となるバンドが検出することが出来た。特にHuh7細胞株は最もバンドが鮮明に検出できたため、有用であることが示唆された。また、血清から脂質を抽出することを目的としてポリエチレングリコールを血清に加え、遠心分離を行うことでPEG-HDLを作製した。アガロースゲル電気泳動によりHDLのみ抽出されたことが確認された。
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