研究実績の概要 |
手術後の疼痛やがん性疼の痛管理に使用されるオピオイド鎮痛薬は、副作用としてオピオ イド誘発性便秘症(Opioid-induced constipation: OIC)を引き起こすことが知られている。オピオイド誘発性便秘症は患者のQOL低下につながり、さらに低用量のオピオイド鎮痛薬の使用でも誘発されることから、厄介な副作用であると認識されている。鍼通電療法は術後の疼痛を緩和し、疼痛管理のためのオピオイド鎮痛薬の使用を減少させるという報告がある(石丸2000, Wu MS 2016)。鍼通電療法は手術後の多様な症状に対して効果的であると考えられ、OICにおける鍼通電療法の効果についても検討することは非常に臨床的に重要である。OICに対する鍼通電療法の効果を検討するため、μ受容体アゴニストであるロペラミドによるOICモデルの作成と鍼通電刺激(Electroacupuncture: EA)の影響を検討した。 SD系雄性ラットを対照群、OIC群、OIC+EA群に分けた。前処置としてカテーテルを盲腸から結腸側に向けて挿入し、5日間の回復期間を設けて測定した。対照群は生理食塩水、OIC群とOIC+EA群はμ受容体アゴニスト(ロペラミド塩酸塩, 4.0 mg /kg/2回/日, s.c)を測定3日前から毎日投与した。OIC+EA群は測定前にEAを行った。CTは、留置カテーテルからマーカー20粒を生理食塩水とともに注入し、経時的にソフトX線で撮像し、Geometric Centerの算出により評価した。μ受容体アゴニストによりCTが遅延し、その遅延はEAによって改善された。この結果により、EAはOICを改善することが示唆された。 これまでの内容を2022年度に学会発表を行った。現在は薬理学的にOICの病態とEAの効果を詳細な検討を行っている。
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