研究課題/領域番号 |
20K16564
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
平松 ゆり 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70850072)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 間質性肺炎 / マクロファージ / S100タンパク質 |
研究実績の概要 |
膠原病(CTD)合併する間質性肺炎(IP)の発症や病態形成にはTh1細胞やマクロファージの活性化が関与していること、S100タンパク質がマクロファージ活性化を制御していることが報告されているが、ヒトIPにおけるS100タンパク質の役割について十分な知見がない。本研究では、ヒトIPにおけるS100タンパク質の役割を明らかにする。 代表的なCTDである全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、強皮症(SSc)、皮膚筋炎(DM)、抗好中球細胞質抗体関連血管炎(AAV)についてS100タンパク質血中濃度(S100A8、S100A9およびS100A8/9[calprotectin]を測定した。その結果、CTDは健常者と比較すると、それぞれ266.5±194.7ng/mL vs 79.7±49.0ng/mL、46.9±41.6ng/mL vs 21.4±19.3ng/mL、15.9±21.1μg/mL vs 3.41±2.68μg/mLといずれも高値であった。またはS100A8は、いずれの疾患においても健常者に比べて高値であったが、S100A9はSLE、MPA、RA、SScにおいて、またcalprotectinはSLE、MPA、RAにおいて高値であった。次にIPの有無で比較をすると、AAVにおいてはIPがある群がない群に比べて全てのS100タンパク質濃度が高値であったが、RAにおいてはIPがある群がない群に比べて全てのS100タンパク質濃度が低値であった。また、SScにおいてIPの有無で差が無かった。 以上の結果から、CTDおよび合併するIPにおいてS100タンパク質濃度はその病態に関連することが示唆され、バイオマーカーとなる可能性がある。一方、個々の疾患において異なる結果が得られ、CTD自体あるいはIPの疾患活動性が関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
保存血清を用いており試料は全て採取済みであるため
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果から、CTDおよび合併するIPにおいてS100タンパク質濃度はその病態に関連することが示唆されたが、個々の疾患において異なる結果が得られた。次年度は、IPの合併の多いDM、SSc、RA、AAVに絞って解析を行う。 CTD-IPの臨床データを収集し、S100タンパク質濃度の測定を行う。S100タンパク質濃度と臨床データあるいは既存のバイオマーカーとの関連性を明らかにし、CTD-IPの病因、病態形成におけるS100タンパク質の役割を明らかにする。血液バイオマーカーとしては、各疾患の病勢や病態に関わるマーカー(自己抗体、CRPなど)と間質性肺炎のマーカー(KL-6、SP-D、P/F値、フェリチンなど)を用い、胸部高解像度CT(HRCT)、呼吸器能検査を評価する。これらの疾患バイオマーカーとS100タンパク質濃度との関連性を統計学的に解析する。 CTD-IPに対して免疫抑制剤などの治療介入を行っている場合には疾患前後でのS100タンパク質濃度の変化を明らかにする。また、疾患バイオマーカーおよびS100タンパク質濃度の変化と関連性、治療反応性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
概ね予定通り使用した。差額は次年度の物品費として使用する。
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