研究課題/領域番号 |
20K16569
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所) |
研究代表者 |
半澤 健 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター(研究所), その他部局等, 研究員 (00808347)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 遊離糖鎖 / 腫瘍マーカー / 尿 / HPLC / LC/MS / 糖鎖 |
研究実績の概要 |
尿中遊離糖鎖に着目した腫瘍マーカーの開発を目指し、マーカー候補糖鎖の探索を進めた。がん患者(胃がん、膵がんおよび胆管がん)と健常者コントロールから得られた尿検体から遊離糖鎖を抽出・ピリジルアミノ化標識したのちにHPLCおよび質量分析に基づいた手法により分析した。尿には検体間で濃度の差が大きいという問題点があるが、これに関しては尿中クレアチニン濃度を基準にすることで、健常者コントロールの遊離糖鎖の濃度がほぼ一定となることを確認している。尿中遊離糖鎖は非常に多くの種類の糖鎖の混合物からなっており一括した糖鎖解析は困難であった。そこで、まず酸性糖鎖かつ分子量2,000以下の比較的小さな構造に絞って分析を行った。結果として、がん患者の一部において存在量が特異的に増加する糖鎖が見出された。増加した代表的な糖鎖の構造としては、sialyllactose、lactoseまたはN-acetyllactosamine type-IIを基にsialyl Lewis X/Aまたは6-sulfo-Lewis Xの伸長構造を有する糖鎖、シアリル化または6-sulfo-Lewis Xを有する遊離N-型糖鎖および新規のNeuAcα2-3Galβ1-4(+/Fucα1-3) Xylα1-3Glcが挙げられる。これらの増加する糖鎖の探索は多段階のHPLC分離を経て行われた。一方で、測定までの時間を短縮するため、標識された尿中糖鎖混合物を逆相(C18)またはHILIC(Amide)カラムによる分離を行うLC/MSを用いて一括して測定する系の検討も進めた。尿中遊離糖鎖には、質量分析では分別が困難な構造的に類似した異性体が多く含まれるが、異性体の分離には逆相系の分離が適してるようであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
がん患者の尿中遊離糖鎖の分析し腫瘍マーカー候補糖鎖の探索を行い、実際にがん患者において特異的に増加し得る糖鎖を検出することが出来た。また、糖鎖分析の迅速化に向けたLC/MSの条件検討も進めることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、尿中遊離糖鎖においてがん患者において特異的に増加する構造の探索をに進める。特に、これまでに行っていない微量なものおよびより分子サイズが大きなものに関して重点的に行う。また、これまでに行った胃がん、膵がんおよび胆管がん以外のがん患者検体の分析も進め、がんの種類と変化する糖鎖構造の関連に関するデータの収集も行う。改善の余地が残る、糖鎖の抽出・標識およびLC/MS分析におけるHPLC(カラム、移動相の組成など)のさらなる条件検討を行い糖鎖の定量の迅速化を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の研究実施計画では糖鎖の抽出・標識試薬およびHPLCカラム、MSプローブなどの消耗品に使用する予定であった。しかし、予備的な実験が多く、消耗品の使用頻度が低くなった。次年度ではより多くの消耗品の使用が予測されるため、繰り越しとした。
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