研究課題
本研究では、頭蓋内電極を使用して、皮質間結合を有向性に評価する電気的線維追跡法であるcortico-cortical evoked potential (CCEP)により電気生理的コネクトームを作成し、皮質の有する高次脳機能や、てんかん発作関連部位におけるネットワーク構造の特徴を明らかにすることを目標としている。2021年度の成果としては①高次の機能野と一次の運動感覚野のoutbound/inboundの特徴の違いを早い潜時の誘発電位(N1電位)と遅い潜時の誘発電位(N2電位)両方の電位について示した(日本神経学会2021)。②また発作焦点では遅い潜時の誘発電位の振幅が変容している可能性を示した(Asian&Oceanian Epilepsy Congress2021, 日本てんかん学会2021)。今後発作焦点での脳葉ごとの遅い潜時の誘発電位の振幅の違いを報告予定である。予定していた25症例の解析が終了しており、昨年に引き続き正常脳機能におけるネットワーク構造とてんかんによるその正常ネットワーク構造の変容を明らかにすることができている。論文についても現在revision中の段階が1報と、投稿準備段階が2報である。今後本研究により、ヒト脳における病態ネットワーク/機能ネットワーク内での各皮質のクラスター性、中心性等の構造特徴を解明し、さらに皮質機能や皮質切除後の機能障害、発作抑制等の臨床情報と合わせて検討することで、より確実にてんかん発作の伝播を阻害し、高次機能を保つことを可能にする臨床的指標の確立を目指す。
2: おおむね順調に進展している
研究計画においては2021年度の目標として「てんかん発作起始部、発作起始部と発作が伝播した電極間、発作間欠期にてんかん性放電を認める領域における同様のネットワーク構造の特徴を明らかにする。」としていた。研究実績に記載したように2021年度の目標であったてんかん発作の焦点におけるネットワーク構造の特徴・変容についても、早い潜時の誘発電位、遅い潜時の誘発電位について結果を出すことができている。COVID-19感染症の影響で症例の蓄積や共同研究の推進で遅れた部分はあったが、研究内容としては概ね順調に進展していると考えている。
研究計画書に記載通り、2022年度の目標としていた深部電極を含めて同様のネットワークを作成し、切除された脳領域のネットワークの構造と切除後の脳機能の障害、てんかん発作再発の有無も検討することで、脳機能温存、てんかん発作治療のためのネットワークに関する臨床的指標を作成することも着手していく。COVID-19感染症の影響で遅れていた症例の蓄積や共同研究の推進も進めていくことと平行してこれまでの結果の論文作成、投稿も進めていく。
COVID-19感染症の影響で国内、海外学会への出張費がかからなかったために使用額が当初の予想よりも少額になった。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (3件)
Neurology and Clinical Neuroscience
巻: 10 ページ: 229~230
10.1111/ncn3.12600
Clinical Neurophysiology Practice
巻: 6 ページ: 29~35
10.1016/j.cnp.2020.11.004