脳梗塞、脳出血、脳血管性認知症の発症・病状悪化に、脳血管透過性の亢進の関与が示唆されているが、脳血管透過性が亢進するメカニズムは解明されたとは言えない。本研究の目的は、in vivo において血管透過性を評価することが出来る実験系を確立し、血管透過性亢進メカニズム・病態を解明することである。 上記研究目標実現のために血管内皮細胞が蛍光標識されたTie2-GFPマウスに脳血管透過性を亢進する刺激を加え、頭窓を作成し、二光子顕微鏡を使用し、観察する。血管透過性亢進の評価はrhodamine dextranの血管外(神経実質)への拡散を蛍光強度から定量化して行う。実験系確立にあたり、まず、脳血管透過性を亢進する刺激はトロンビンの脳への直接注入で固定し、血管透過性の評価をより適切に行えるrhodamine dextranの分子量の同定を行った。分子量4.4KDa、10KDA、22KDa、70KDaのものを用いて実験、比較し、10KDAのrhodamine dextranが血管透過性の評価が適切であることを同定した。また、トロンビンの脳への直接注入を行う際の部位、深さ、二光子顕微鏡を用いて観察を行うタイミング等を精査し、安定的、効率的に脳血管内皮透過性亢進を評価出来る実験系の確立を行った。 最終年度である2022年は、脳定位固定トロンビン皮質下注射およびシャムオペ群それぞれで15例ずつ観察を行い、rhodamine dextranの神経実質の蛍光強度に有意な差が認められた。この結果をまとめ、2023年度の脳循環代謝学会での発表を予定している。また、作用機序はことなるが、トロンビンと同様に脳血管透過性を亢進させるHA2/5抗体の直接注入や永久閉塞モデルでの観察を行っている。
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