本研究では、ADSSL1ミオパチーの筋病理所見において疾患特異的な所見や疾患の進行に伴う変化を見い出すことで、病態を解明し疾患概念を確立することを目指している。さらに、ADSSL1ノックアウトマウスと、ミスセンスのノックインマウスはすでに作製しており、作製した本マウスは将来的には治療法の開発にも利用できる非常に重要で価値のあるものと考える。 [1] ADSSL1ミオパチー63症例における病理所見の解析により、何れの例も小児期発症で極端に足が遅く疲れやすかった。筋力低下は約半数で近位・遠位ともに障害されていた。進行は緩徐で老年期まで歩行が保たれていた。加えて、これまで報告のない嚥下障害や肥大型心筋症、拘束性呼吸障害を高頻度に認めた。筋病理では全例でネマリン小体、脂肪滴を認め、日本で最も頻度の高いネマリンミオパチーであることを示した。これまで韓国から報告されていた、縁取り空胞を伴う 遠位型ミオパチーとは異なる、本遺伝子異常による共通の表現型を見出し論文化した。 [2] 日本人63症例で見い出した変異として最も多いのはミスセンス変異とナンセンス変異を複合ヘテロ接合性にもつパターンであり、韓国と日本で共通する創始者変異と考えられている。すでに、CRISPR/Cas9システムを用いてADSSL1遺伝子のノックアウトマウス、変異ノックインマウスを作製し、ノックアウトとノックインを複合ヘテロ接合性にもつマウスを作製した。現在ノックアウトとノックインを複合ヘテロ接合性にもつマウスを用いて治療実験を行っている。
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