研究課題
POEMS(クロウ・深瀬症)症候群は形質細胞の単クローン性増殖を基盤に、多発神経炎、臓器腫大、浮腫・胸腹水貯留等の全身症状を呈する希少難治性疾患である。その病態には、血管内皮増殖因子や複数の炎症性サイトカインが複雑に関与していると考えられている。多くの症例では、骨髄腫治療薬で治療することで寛解を得ることが出来るが、一部の症例では、亜急性に進行する全身性浮腫および大量胸腹水貯留(capillary leak syndrome)や重症肺高血圧を合併し、治療が奏功する前に呼吸不全や循環不全を生じ致死的な転帰をたどる。軽症例~重症例まで臨床経過は様々であり、その多様性は症例ごとのサイトカインプロファイルの違いに基づくと推定される。本研究の目的は、POEMS症候群における特定のサイトカインと特定の臨床症状(臓器障害)との関連を明らかにすることである。特に、重篤な合併症を呈する症例におけるサイトカインプロファイルを解明することで、重症例に対する新規治療作用点を探索することを目指している。今年度は、POEMS症候群自験120例における臨床経過、検査データ、予後を診療録に基づいて評価を行なった。診断時のパフォーマンスステータスが3以上の症例、初期治療で寛解を得られなかった症例において長期予後が優位に不良であることが明らかとなった。今後は、予後不良例における詳細な臨床的特徴の検討と、保存血清を用いてサイトカインプロファイルの解析を行う予定である。
3: やや遅れている
当初の研究計画からの変更点として、研究の質を向上させるために、健常コントロールが必要と判断した。健常者を対象に含めた介入研究として倫理審査委員会の承認を得るのに時間を要したため、健常コントロールの血清検体の収集が遅れている。POEMS症候群患者の血清検体は既に保存されているため、健常コントロールの血清検体収集が済めば、サイトカインを一斉に測定することが出来るため、遅れを取り戻すことができると考えている。
既にPOEMS症候群120例の臨床データ、70例以上の保存血清を確保しているが、さらに新規症例を随時登録し、前向きに臨床データおよび血清検体を収集していく。さらに健常対象者の血清検体の収集も進め、健常検体を20例収集した時点でサイトカイン測定を一斉に行う。
予定していたサイトカイン測定の準備が整わなかったため、Bio-plexヒトサイトカインアッセイキットを購入する必要がなくなったため次年度使用額が生じた。次年度にサイトカイン測定を予定しているため、Bio-plexヒトサイトカインアッセイキットを購入するために使用する。
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