POEMS(クロウ・深瀬症)症候群は形質細胞の単クローン性増殖を基盤に、多発神経炎、臓器腫大、浮腫・胸腹水貯留等の全身症状を呈する希少難治性疾患である。その病態には、血管内皮増殖因子(VEGF)や複数の炎症性サイトカインが複雑に関与していると考えられている。多くの症例では、形質細胞を標的とした治療により寛解を得ることが出来るが、一部の症例では、亜急性に進行する全身性浮腫および大量胸腹水貯留(capillary leak syndrome)や重症肺高血圧を合併し、呼吸不全や循環不全を生じ致死的な転帰をたどる。軽症例~重症例まで臨床経過は様々であり、その多様性は症例ごとのサイトカインプロファイルの違いに基づくと推定される。本研究は、POEMS症候群における特定のサイトカインと特定の臨床症状(臓器障害)との関連を明らかにすることを目的とした。特に、重篤な合併症を呈する症例におけるサイトカインプロファイルを解明することで、重症例に対する新規治療作用点を探索することに主眼を置いた。 最終年度は、POEMS症候群患者、健常者の血清検体を用いてサイトカインアッセイを実施した。POEMS症候群では健常者と比較して、VEGF、IL-1β、IL-6、IL-8、IL-12、IP-10、MCP-1値の上昇が認められた。Capillary leak syndromeの臨床症状を呈した患者群では、IL-6値が有意に高かった。また、IL-1β、IL-6、IL-8の値は、推定肺動脈圧と正の相関が認められ、POEMS症候群における肺高血圧症と関連していることが示唆された。これらサイトカインはPOEMS症候群に対する新規治療ターゲットとなる可能性がある。
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