研究課題/領域番号 |
20K16595
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
齋藤 理恵 新潟大学, 脳研究所, 助教 (80829078)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 脳小血管病 / CADASIL / CARASIL / HTRA1 / 3D神経病理 / 白質変性 / もやもや病 / アミロイドアンギオパチー |
研究実績の概要 |
本研究では,脳小血管病における血管と白質変性の関係を明らかにし,脳小血管の観察に適した3D免疫染色のプロトコールを開発する.これにより脳小血管変性の解剖学的基盤を明らかにし,脳小血管病の再定義を行うと共に,各疾患の体系化を行うことを目的とする. 今年度は,まず孤発性と遺伝性脳小血管病変性白質と小血管について,詳細な2D解析を行った.これにより白質変性がCADASILで最も強く,それは毛細血管変性の強さに起因することを明らかにした.また,PVSの拡大が早期から起こり,MRIのleukoaraiosisの初期の変化に関係することを見出した.また,3D免疫染色の透明化のプロトコールを改良し,BABBを用いることで,白質の高度透明化と抗原性維持を両立させることに成功した.このプロトコールを用いてlarge sampleで変性白質と血管の立体的観察を解析し,いくつかの知見を得た.2D解析でHTRA1-autosomal dominant diseaseでは,白質変性が比較的軽いものの,SMA脱落が強く惹起されることが示され,3D観察で,径の大きなarterioleが選択的に障害されることが明らかとなった.さらに,各症例の脳小血管を系統的に観察する方法を確立したことで,これまでlarge vessel diseaseと考えられていたモヤモヤ病も小血管レベルが障害されることを見出した.また,同様にIVBCLが脊髄長大病変を形成する剖検例を解析し,脊髄病変が,主に静脈還流障害に起因することを明らかにした(論文accept済).さらに,急性期の視床出血例についても血腫の範囲よりも広く脳小血管の変性が起こっていることを見出し,新たな病理学的知見を得るに至った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は時間がかかることが予想された2D解析と3D免疫染色のプロトコール改良に成功し,データの解析は終了した.さらに,予定以外の疾患でも新たに脳小血管の異常を見出すに至り,ミクロアンギオパチーの体系化の指標が見えてきた.以上により,本研究課題は計画以上に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
開発した2D定量方法と3D免疫染色のプロトコールをCAAへ応用し,アミロイド沈着とSMA脱落,血管周囲腔拡大との空間的関係を解析する.モヤモヤ病は病態が不明であり,血管変性の機序も未解明である.モヤモヤ病患者とコントロール例における脳小血管の蛋白プロファイリングを行い,疾患特異的に変動する蛋白を探索する.
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