研究課題/領域番号 |
20K16596
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
李 佳益 名古屋大学, 医学系研究科, 研究員 (40867420)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | TDP-43 / ニューロン / オリゴデンドロサイト / 髄鞘 |
研究実績の概要 |
ALS 研究はこれまでALS 病態をニューロンやミクログリア、アストロサイトを用いた解析で進められてきたが、オリゴデンドロサイト(OLG) とニューロンの関連は未開拓である。本研究ではニューロンとOLG 間の相互連関に注目し、その病態を解明することによりALS の新たな治療標的の同定を目指している。我々はTDP-43flox マウスとニューロン特異的にCre を発現するCamKII-Cre マウスを交配し前脳ニューロン特異的TDP-43 ノックアウトマウス(TDP-43CKO マウス)を作成した。TDP-43CKO マウスではTDP-43ノックアウトニューロンに変性は生じず、形態は保たれていたが、核が変性したOLG が散見され髄鞘の減少も観察された。我々はAAVベクターを利用して細胞質局在型のTDP-43(AAV-TDPmNLS-GFP-Flex)をTDP-43CKOマウスの海馬ニューロンに発現すると同側海馬の髄鞘が回復することが判明した。ニューロンにおけるTDP-43が細胞質や軸索で髄鞘化を誘導していることが想定された。そこでFACSでGFP陽性ニューロンを分離しRNAseq で網羅的トランスクリプトーム解析を行い、TDP-43 によって制御され髄鞘化を誘導するニューロン側の分子を複数同定した。同定された分子Aはシナプス前終末に存在する蛋白質であり、OLG側の対応する分子と結合し、髄鞘生成を制御することが報告されている。実際に免疫染色、real-time PCRを用いてTDP-43CKOマウスのTDP-43ノックアウトニューロンにおける分子Aが減少していることも確認することができた。また、Plp1-Creマウスを利用してオリゴデンドロサイト特異的TDP-43ノックアウトマウスを作成することに成功している。今後解析を進めて行く予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.ニューロン特異的TDP-43ノックアウトマウスの解析が完成。 2.RNAseqを用いて、TDP-43 によって制御され髄鞘化を誘導するニューロン側の分子を同定した。 3.OLG特異的TDP-43ノックアウトマウスを作成することができた。
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今後の研究の推進方策 |
テーマ1:ニューロンにおける分子Aの髄鞘への影響の解明 ニューロンにおける分子Aの髄鞘への影響を解明するため、今後AAV-A-Flexを使ってTDPCKO海馬ニューロンに分子Aを発現し髄鞘が回復できるかどうかを確認する。 テーマ2:TDP-43によって髄鞘形成が制御されるメカニズムの解明 今までの実験によって、分子AがTDP-43によって髄鞘化を誘導する重要な要素の一因が明らかになったが、分子Aの発現調節メカニズムは解明できていない。primary neuronを用いたmRNA stability assayやpromotor assayなどの方法を今後明らかにしていく予定である。またTDP-43ノックアウトマウスの表現系を解析するため、Open field test、elevated plus maze、novel object recognitionなどの解析を行う。 テーマ3:OLG特異的TDP-43ノックアウトマウスの解析 これまでの検討で、TDP-43ノックアウトOLGと共培養した正常ニューロンの形態が変化することが判明している。既に作成されているOLG特異的TDP-43ノックアウトマウスの形態を解析し、さらにFACSでOLGを分離、RNAseqを施行し、TDP-43によってニューロンの形態を制御するOLG側の因子の同定を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)コロナの影響で、予定していた試薬および実験用消耗品が年度内に納品されなかった為、次年度使用額が生じた。 (使用計画)5月に入荷の見込みのため実験に使用する予定である。
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