研究実績の概要 |
副交感神経障害の検出によるパーキンソン病(PD)の診断マーカーの確立として頸動脈エコーを用いた迷走神経断面積測定、およびウェアラブルデバイスを用いた長時間心拍変動について検討を行った。ウェアラブルデバイスを用いた検討では、取得した長時間心拍変動から副交感神経パラメーターの最小値を抜き出すことにより、より鋭敏に副交感神経障害を検出できる可能性が見いだされた。しかしながら最小値を抜き出すという手法と、従来の自律神経機能検査との比較や関連性については検討されていなかった。そこで長時間記録から最小値を選ぶ手法と既存の自律神経機能検査の関連性についての解析を追加した。コントロール28例、PD49例、PD以外の神経疾患として多系統萎縮症(MSA)33 例に対してSDNNとCVRRを測定した。SDNN・CVRRは自律神経機能検査中の安静臥位の最小値、安静立位の最小値を測定し、既存の自律神経機能検査であるHead-up Tilt試験、Valsalva負荷試験等との比較、関連性について検討した。ROC解析ではSDNN・CVRRの最小値は、既存の自律神経機能検査よりも優れた値を示した(安静立位SDNN;AUC = 0.86(コントロールvs PD), AUC = 0.90(コントロールvs MSA) など)。またSDNN・CVRRの最小値は、Valsalva負荷試験でのBaroreflex SensitivityやValsalva ratio等の副交感神経パラメーターと有意な相関を認めた。この結果から、長時間記録の心拍変動パラメーターから最小値を抜き出す手法は、副交感神経障害のマーカーであり、かつ既存の自律神経機能検査よりも優れている可能性が示された。最小値を抜き出す手法は、ウェアラブルデバイスを用いた長時間心拍変動の取得と組み合わせることによりPDの診断マーカーとして有用である可能性がある。
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