本研究の目的はパーキンソン病患者の認知機能低下を含む非運動症状に対する音楽療法の有効性を検証することであった。The international Parkinson and Movement Disorder Societyの臨床診断基準に基づき軽度認知障害を有するパーキンソン病と診断された患者に対して週1回、45分程度の音楽療法を音楽療法士が8週間連続して行い、介入の前後で神経心理検査や運動機能の評価を行った。 当初は対面での音楽療法を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染症の影響で大幅な計画変更を余儀なくされた。対面からオンラインによる音楽療法へと方法の変更を試みたが、リアルタイムでの演奏は現時点での通信技術ではタイムラグが生じたため事前に撮影した動画コンテンツをウェブ上にアップしてオンライン会議ソフトウェアで動画を流しながら行った。 これまでに10名の患者から同意を取得し、クロスオーバー法を用いて1グループ2-3名程度で介入を行っている。今年度中には20名程度に対して音楽療法を終えて得られたデータの解析へと進む予定としている。 本研究の意義として、軽度認知障害を伴うパーキンソン病患者への音楽療法の有効性を示すことで根治的治療のない非運動症状に対する支持療法の1つとしての地位を確立することに繋がる。さらに、オンラインでの音楽療法による安全性や有用性を示すことができれば、今回のような感染症の流行下であっても在宅で行うことが可能な支持療法となることに加え、近くに音楽療法士のいない離れた地域でも提供できるという大きな意義を持つ。
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