研究実績の概要 |
本研究では、Charcot-Marie-Tooth (CMT) 病の包括的な遺伝子検査を継続しつつ、新規原因遺伝子を同定し、臨床的・遺伝学的・病理学的解析を行い、さらに病態モデル細胞・疾患モデル生物(ショウジョウバエ・マウス)を樹立・解析することで、CMTの病態解明および治療法開発を目指している。本年度の研究実績を下記の通りである。 ①新規のCMT患者500人(前年度250人および最終年度250人)の遺伝子検査を継続して実施することができた。また、2022年3月にCMT患者2598例の臨床的・遺伝学的特徴をまとめ学術論文として報告した(Y. Higuchi et al, Journal of Human Genetics, 2022)。 ②CMTの新規原因遺伝子COA7変異については、新規3家系を含む計7家系を同定し、彼らの表現型を詳細に評価し、ニューロパチー、小脳失調だけでなく、錐体外路徴候、痙性など多彩な神経徴候を呈することを明らかにした。 ③新規候補遺伝子Gene Xについては、計5家系を同定し、表現型の解析、家系分析データの蓄積などを進めた。Gene XのショウジョウバエKDモデルはすでに樹立しており、寿命短縮、クライミングアッセイによる運動能力の低下、またそれに対応した神経筋接合部のシナプス形態変化などを確認できた。また、患者で確認されたGene Xミスセンス変異(P2041H、C3776Y)の生体への影響を解析するために、早稲田大学との共同研究にてCRISPR/Cas9を用いたノックイン(KI)マウスモデルの樹立を完了した。現在は、交配により個体数を増やし、表現型解析および病理学的解析を進行中である。 ④原因未同定のCMT患者多数例のエクソーム解析データから候補遺伝子を検索中である。
|