研究課題/領域番号 |
20K16605
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
大道 卓摩 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任助教 (60869288)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロイシンリッチα2グリコプロテイン / パーキンソン病 / 血液バイオマーカー / ホスホグリセリン酸キナーゼ |
研究実績の概要 |
当該研究の目的の1つに『パーキンソン病(PD)およびパーキンソン症候群(PS)のヒト血漿中脳細胞由来エクソソームに含有される疾患特異的蛋白の測定』を上げており、疾患特異的な候補分子の同定に取り組む2つの研究を実施した。 第一に、PDの炎症性マーカーとなる候補分子として、炎症性腸疾患やその他の炎症性疾患で活動性マーカーとなっているLeucine-rich α2 glycoprotein (LRG)に注目し、PD患者群および疾患対照群において、血清中の濃度測定を実施した。結果として、PDの背景因子(年齢、性別、併存症、血清CRP濃度)に因らず、PD群では、疾患対照者群よりも、血清LRG濃度が高いことが証明できた。PDで上昇することがメタ解析で証明されている血清CRP濃度よりも血清LRG濃度がより良い診断マーカーになることを証明した。この内容は現在、国際雑誌への論文投稿中である。 第二として、解糖系の酵素であるホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)に注目し、PD患者および対照者の赤血球(RBC)におけるPGK活性のプロファイルを評価した。結果としては、赤血球中のPGK活性の上昇は、60歳以下の比較的若いPD患者群でみられるのと同時に、加齢に伴っても上昇することが示唆された。また、線条体のドパミントランスポーターの集積比の程度は、PGK活性の上昇と関連することが示唆された。PGKアッセイをPDの診断バイオマーカーとして応用する場合、およびPGK活性をモニタリングする治療法として応用する場合に重要な考慮点となることが判明した。この内容は、国際雑誌に掲載された(Parkinsonism and Related Disorders 91 (2021) 128-134)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト血漿中の脳細胞由来エクソソームの定量が、PDおよびPSの血液バイオマーカーとして有用であることを検証するために、『脳細胞由来エクソソーム量の定量 系の確立』と『PDとPS患者血漿における脳細胞由来エクソソーム定量系を用いた検討』を予定し、脳細胞由来エクソソーム量を測定するための、PD/多系統萎縮 症(MSA)/進行性核上性麻痺(PSP)患者および疾患対照者から末梢血血漿の採集を前年度に引き続きすすめ、その採集サンプルについて、臨床情報をデータベースとして登録し た。採集サンプルを、エクソソーム分離と抽出について、研究協力者の異動に伴い、実験および解析に大幅な遅れが出ており、エクソソーム分離およびバイオマーカー開発が完遂できていない。
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今後の研究の推進方策 |
PDおよびPSのヒト血漿中脳細胞由来エクソソームに含有される疾患特異的蛋白の測定』を予定していたが、エクソソーム領域の研究が急速に進展しているため、脳神経由来エク ソソーム含有蛋白として、従来の研究計画に記載したバイオマーカー(α‐シヌクレイン、αーシヌクレインオリゴマー)だけでは新規性に乏しい可能性があり、新たなバイオマーカーとして、血清/血漿カフェイン、カフェイン代謝産物、血清/血漿炎症性マーカー、エネルギー産生酵素活性測定など、多様な候補バイオマーカーについて、当該研究のコホート内でパイロット的解析を進めている。血清LRG濃度測定については、炎症性腸疾患では保険収載されており、一般の検査室でも測定可能であり、炎症によるエクソソーム数の増加の関連についてLRGを介したバイオマーカー開発を検討している。PGK活性測定は、当研究室独自の測定法であるが、標準化できる方法を開発していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画に遅れが生じたため、本年度でのサンプル測定を含めた実験が完遂できなかった。脳細胞由来エクソソーム量を測定するための実験物品や器具が、研究協力者の異動とともに不足が生じたため、次年度に購入を予定している。
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