研究実績の概要 |
セロトニン症候群は、セロトニン作動薬の服用により精神症状、神経筋症状、自律神経症状などが認められる疾患で、重篤な場合は、横紋筋融解症やミオグロビン尿症などの骨格筋障害を引き起こす。しかし、セロトニンにより骨格筋が障害される分子メカニズム、さらには骨格筋におけるセロトニンに関する知見は乏しい。そこで本研究では、1. 骨格筋におけるセロトニンの役割、及び2. セロトニン投与による骨格筋障害のメカニズムを明らかにすることを目的とした。 今年度はマウス骨格筋におけるセロトニン関連遺伝子の発現解析と、セロトニンを投与したC2C12細胞での遺伝子発現解析を行なった。マウス骨格筋におけるセロトニン関連遺伝子の発現解析の結果、マウスのヒラメ筋と長趾伸筋においてセロトニンの産生や代謝に関与する酵素の遺伝子発現に有意な差が認められた。さらに、筋肥大や筋萎縮のモデルマウスの骨格筋においてもこれらの遺伝子発現に変化がみられたことから、骨格筋部位ごとにセロトニン産生や代謝が異なっており、それらが筋肥大や筋萎縮に関わっている可能性が考えられた。次に、セロトニン添加培地で培養したC2C12細胞において、筋肥大や筋萎縮、エネルギー代謝に関連する遺伝子の発現変化を調べた。セロトニンの投与期間、濃度によっては異なる結果が得られたため、培養細胞レベルでもセロトニン添加の効果を引き続き解析する必要があるものの、今回添加したセロトニンの濃度では、最も高濃度で添加した際にFbxo32, Ucp2, Ucp3の遺伝子発現が低下し、myotubeの形成が抑制された。今回行った高濃度のセロトニン添加は、骨格筋障害をもたらす細胞のモデルとなり得るため、今後、治療標的分子の発見につなげていきたい。
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