初年度は「短期と長期の痙攣誘発刺激が引き起こす抑制性細胞のGABA合成に与える影響の違い」を明らかにするための実験を行った。 ペンチレンテトラゾール(PTZ)の10回投与(1回/日)の段階でラットの痙攣ステージはラシーンの分類に当てはめると大体2-3(頭部や四肢の痙攣)程度であった。この時の動物の海馬におけるGAD発現量を定量解析したところ、GAD67には目立つ変化は無かったが、GAD65の発現が増加していることが分かった。この増加をGABAサブタイプ間(パルブアルブミン、ソマトスタチン、カルレチニン、コレシストキニン)で比較したところソマトスタチン陽性(SOM)細胞で特に顕著であった。 PTZ20回投与では痙攣ステージは4-5まで到達し、強直間代痙攣発作が全ての個体で確認された。この動物の海馬ではGAD65発現量は減少しており、同じくSOM細胞で顕著に見られた。GAD67には変化は無く、また、全体のGABA細胞数などの減少も見られなかった。 先行論文では、痙攣誘発刺激はGAD65発現を増加するという報告と減少するという報告が混在していたが、今回の結果から刺激回数により、GAD65はダイナミックに増減することが明らかになった。また、この変化がSOM細胞で顕著であったことから、錐体細胞の樹状突起への抑制入力に変化が生じている可能性が示唆された。この一連のGAD65変化は神経細胞の過剰興奮に対する抑制機構とその破綻を意味しているのではないかと考えており、今後更に研究を進めていく予定である。
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