本研究の主たる成果は、うつ病と双極性障害の患者を対象とし、線条体ドパミン機能の代理指標として認知されているドパミントランスポーター(DAT)-SPECTに新規手法であるテクスチャ解析を適用し、得られた特徴量が抑うつの重症度と関連することを示したことである。具体的には、寛解群、軽症ー中等症群、重症ー最重症群の群間比較において、寛解状態と抑うつ状態で有意差を示すこと、この特徴量が同一個人の治療前後においてその状態像の変化に伴って変化することを明らかにした。これらの結果は年齢や投薬の影響では説明されず、DAT-SPECTに対するテクスチャ解析が従来の解析方法より多くの情報をもたらす可能性を示すとともに、DAT-SPECTのテクスチャ特徴量が抑うつに関する状態マーカーとして有用である可能性を示した。 最終年度には、上記2疾患に加え、パーキンソン病やその関連疾患など器質因を背景に持つ抑うつ状態の患者のデータ収集も継続した。加えて、テクスチャ特徴量を用いた治療反応性の予測を可能とするマーカーを作成することも並行して行ったが、研究期間内での達成には至らなかった。 そのほか、淡蒼球を中心としたマンガン沈着に伴うドパミン機能障害の関与が想定される、稀な抑うつ病態に関する報告を行い、ドパミン機能障害という視点から抑うつ病態への考察を深めた。
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