研究実績の概要 |
目的:本研究の目的は、統合失調症の発症に大きな効果を持つ体細胞変異を同定し、その病態解明および根本的な治療法開発の分子基盤を得ることである。 具体的内容:統合失調症患者・両親60家系の末梢血ゲノムDNAサンプルを用いて、全エクソーム解析データを既に得ている。通常深度(116±60)で検出された生殖細胞系列変異83個に対し、サンガーシーケンス法にて確認を行った。60家系のうち2021年度に34家系、2022年度に26家系の統合失調症患者DNAサンプルに対し次世代シーケンサー(NovaSeq6000)による高深度(346±96)の全エクソーム解析を行った。患者それぞれの全エクソーム解析データ(高深度+通常深度)に対し、両親の全エクソーム解析データ(通常深度)を参照として体細胞変異の検索を行い、2021年度に28個、2022年度に87個の体細胞変異が検出された。2021年度に検出された28個の体細胞変異に対して次世代シーケンサーによる超高深度(平均深度79,940)のターゲットシーケンスを行った。超高深度ターゲットシーケンスと高深度全エクソームシーケンスのアレル割合は相関していた(R2=0.95)。2022年度に検出された87個の体細胞変異に対し超高深度ターゲットシーケンスをおこなうためのプライマーを設計した。 意義と重要性:体細胞変異が精神疾患の病態に関与している可能性が示唆されているが、これまで体細胞変異の検出は困難であった。本研究では、統合失調症患者・両親トリオを用いて、高深度の全エクソーム解析を行い体細胞変異の検索を行っている。これにより統合失調症の発症に大きな効果を持つ体細胞変異が同定されれば、その病態解明へと結びつけることが可能となる。
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