研究課題/領域番号 |
20K16622
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
AN KYUNGMIN 金沢大学, 子どものこころの発達研究センター, 特任助教 (80866054)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 自閉スペクトラム症(ASD) / 幼児用脳磁図(MEG) / 神経ネットワーク / 運動機能の拙劣さ |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症(以下ASD)は社会性の障害と、限定された反復的な行動に特徴がある。加えて、運動遂行の拙劣さもその中核的な特徴として知られている。ASDでは局所的な脳機能だけでなく脳全体のネットワークも異なることが知られている。運動機能に関してγオシレーションの変化によりASDで実際どのように神経ネットワークが異なるか、その検証が課題となっている。本研究では小児用MEGを用いて、運動遂行課題中の位相振幅カップリング(Phase-amplitude coupling、以下PAC)を調べ運動遂行中の神経ネットワークの変化を明らかにする。本研究の成果はASDの運動機能の拙劣さを説明する脳のメカニズムの解明につながり、小児ASDの新たなバイオマーカーの発見につながる。 COVID-19の世界的なパンデミックで被験者からMEG計測はできなかったが、去年まで測定した運動課題時のMEGデータ(健常児19名、ASD児18名)を用いて位相振幅カップリングを計算し運動遂行中の神経ネットワークの変化を明らかにした。この結果を論文化し、この分野のトップジャーナルである「Neuroimage: Clinical」に投稿し、2020年度1月に出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度には健常児19名及びASD児18名の運動課題中の幼児用MEG測定データを用いて位相振幅カップリングを調べ、運動遂行中の神経ネットワークの変化を明らかにした。健常児よりASD児に弱い位相振幅カップリングを見られ、ASD児の運動機能の拙劣さに関わる神経ネットワークを明らかにすることができた。この結果をこの分野のトップジャーナルの「Neuroimage:Clinical」雑誌に出版した。 本研究の元の計画としては得られた研究成果を論文化し出版するのが2021年度末でしたが、COVID-19のパンデミックのためデータ取得よりデータ解析に集中することが出来た。そのため、1年早く研究結果を出して論文化及び論文出版することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今回の研究では運動実行時の脳の運動野内の位相振幅カップリングを計算し神経ネットワークを調べ、その結果を論文出版した。今回の結果からASDの脳の運動野内の運動機能の拙劣さに関わる脳活動を明らかにすることはできたが、運動実行に関与する脳の領域は運動野だけではなく運動実行のトリガー情報を受ける視覚野、運動準備及び調整をする補足運動野もある。今後の研究ではより広い領域間の神経ネットワークを調べ、自閉スペクトラム症の運動機能の拙劣さを明らかにする計画である。そして、その神経ネットワークの状態が健常児とASD児でどう異なるか確認し、線形判別分析を用いてASDのバイオマーカーを見つける計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の世界的パンデミックの状況から海外学会がキャンセル又はオンラインで開催され、計画した学会参加のための旅費が使用できなかった。そして計画した被験者対象の実験ができなくなったので、人件費及び謝金の使用もできなくなり、次年度使用額が生じてしまった。
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