自閉スペクトラム症(以下ASD)は社会性の障害と、限定された反復的な行動に特徴がある。加えて、運動遂行の拙劣さもその中核的な特徴として知られている。ASDでは局所的な脳機能だけでなく脳全体のネットワークも異なることが知られている。運動機能に関するγオシレーションの変化によりASDで実際どのように神経ネットワークが異なるか、その検証が課題である。本研究では小児用MEGを用いて、運動遂行課題中の位相振幅カップリング(Phase-amplitude coupling、以下PAC)を調べ運動遂行中の神経ネットワークの変化を明らかにした。本研究の成果はASDの運動機能の拙劣さを説明する脳のメカニズムの解明につながり、小児ASDの新たなバイオマーカーの発見につながる。COVID-19の世界的なパンデミックで被験者からMEG計測はできなかったが、去年まで測定した運動課題時のMEGデータ(健常児19名、ASD児18名)を用いて運動機能に関するγオシレーションおよび位相振幅カップリングを計算し運動遂行中の神経ネットワークの変化を明らかにした。運動課題時の運動反応時間、運動機能に関するγオシレーションと位相振幅カップリングの指標を合わせて線形判別分析(Linear Discriminant Analysis)を行った結果、定型発達児とASD児を高い精度で診断できることを発見した。この結果を論文化し、この分野のトップジャーナルである「Neuroimage:Clinical」に投稿し、2020年度1月に出版した。
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