ASD 児(5~7 歳)20 名と健常児(5~7 歳)20 名 を再公募した。ASDの診断はADOSおよびDISCOによって行い、てんかんを合併する児、薬剤 を内服している児、他の身体疾患および精神疾患を合併する児、ASDと診断を受けた同胞がいる健常児が除外した。被験者の認知機能を包括的に再評価した。すなわちK-ABCで児の知的能力を認知処理過程と知識・技能の習得度の両面から評価する。社会的なコミュニケーションと、他者との相互交流、および反復的な行動様式の程度をSRSを用いて評価した。他、日常生活における周囲の環境への適応度を、Vineland 適応行動尺度第二版を用いて、また不注意および衝動性はADHD-Rating Scale-IV日本語版を用いて評価した。小児用脳磁計により安静時の脳磁図を10分間計測し、MRIも撮像した。0.3から200Hzでバンドパスフィルタを加え、独立成分分析を用いて眼球運動、心電図、 筋電図、チャンネルノイズのアーティファクトを除去する。データは6 秒ごとのエポックに区切る。当初予定された時間周波数解析では有意な結果が見出せなかったため、グラフ理論を用いて脳内神経ネットワークを包括的に解析した。具体的には脳を68領域(Desikan Kilianyの脳アトラス)上に神経活動を推定し、脳活動間のconnectivityをPhase Lag Indexを用いて指標化することで得られた脳内神経ネットワークの「グラフ」を、グラフ理論の道具を使って解析した。結果として、グラフ理論に着目することでASD児の脳と健常児の脳が識別できる可能性を示すことができたため、英文専門誌(Frontiers in Psychiatry)に投稿、出版した。
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