患者を対象とした研究は、引き続きコロナ禍のため、思うように実験を行うことができず、論文にまとめるほどの十分な被験者を確保することができなかった。しかし実験は引き続き行う予定であり、近いうちにデータを解析し、論文を投稿する予定である。 その代わりに、生理学研究所において、健常者の神経振動のメカニズムの研究を推し進め、本年度は、オシレーションのハーモニクスに関する論文を国際誌に掲載した。一般に、周期的な刺激が提示されると、その刺激周波数(F Hz)だけではなく、高調波周波数(2F、3F、4F Hzなど)でもオシレーションが発生する。しかしその特性については十分に理解されていなかった。本研究は、MEGを用いて、23名の健常者を対象に、6.67 (40/6)、8 (40/5)、10 (40/4)、13.3 (40/3)、20 (40/2)、40 Hzの聴覚刺激を与え、それぞれの刺激による広範囲のオシレーション変化を調べた。その結果、β周波数帯(13-30 Hz)である13.3、20 Hzの2つの聴覚刺激において、自らの刺激周波数のオシレーションはほとんど変化しないにも関わらず、40-Hz ASSRが特異的に活性化されることが分かった。この所見は、40-Hzオシレーション回路が活性化することによってβ周波数帯のオシレーションが抑制されたことを示唆した。 研究期間中、合計4本筆頭著者として論文を国際誌に掲載することができた。コロナ禍において臨床研究が予定通り進まない中で、方針を転換し、実績を上げることができたと考えている。
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