研究実績の概要 |
B6マウスを用い、受精開始から出産までハロペリドール(HAL)を投与し、出生した仔を対象に研究を行った。胎生期HAL投与による中枢神経系での遺伝子発現の変化を網羅的に把握するため、出生8週齢のマウス海馬RNAをRNA-seqに提出した(HAL vs NS, n = 6 each)。平均値を比較した結果、HAL投与群において、1370遺伝子の有意な発現増加、1260遺伝子の有意なmRNA発現の減少を確認した。1.3倍以上の上昇を認める562遺伝子を対象にGO解析を行った結果、神経発生及びシナプス機能に関連することがわかった。GWAS研究からmiR-137-3pが統合失調症の発症に関与していること、また、神経発生に影響を与えていることより、仔でmiR-137-3pの発現を調べたところ、HAL群では有意に発現が低下していることを確認した。miRNAは転写を抑制することから、miR-137-3pが制御する遺伝子かつRNA-seqの結果にてHALで上昇している遺伝子をmiRWalk 2.0を用いて予測したところ4遺伝子(Htr2c, Nr3c1, Gsk3b, Nrxn1)が候補として挙がった。4遺伝子の発現をqPCR法にて確認したところ、Nr3c1遺伝子mRNAがHAL群で有意に上昇しておりRNA-seqの結果を再現することができた。 次にmiR-137-3pとNr3c1の関係を実験的に実証するため、マウスニューロブラストーマであるNeru2a細胞にmiR-137-3p mimic oligoを導入し過剰発現させたところ、Nr3c1遺伝子発現も減少していることをqPCR法にて確認した。mimic群では、有意に発現が低下していることからも、HALは母マウスを通じて仔へ影響を与えること、少なくとも、miR-137-3pの発現を減少させることで、Nr3c1遺伝子の発現を上昇させることが証明された。
|