研究課題/領域番号 |
20K16633
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
倉地 卓将 国立研究開発法人理化学研究所, 脳神経科学研究センター, 研究員 (10836662)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 社会的隔離 / 養育行動 / 霊長類 / 脳神経科学 / 恐怖反応 |
研究実績の概要 |
成体コモンマーモセットを対象として、人工哺育個体および親哺育個体に恐怖刺激を提示し、養育環境が恐怖反応に与える影響を比較した。恐怖刺激にはゴム製のヘビ(霊長類に先天的な恐怖反応を引き起こす)および怪獣のおもちゃ(新奇物への反応を確認するため)を使用し、それぞれ週に1度・3回ずつ提示した。加えて、刺激提示後に唾液を採取し、コルチゾール濃度を測定した。現在までに各群2個体ずつ実験を行い、親哺育個体は刺激提示を繰り返すことで徐々に恐怖反応を示さなくなるが、人工哺育個体は親哺育個体に比べて刺激への馴化が遅く、刺激提示3回目であっても親哺育よりも多くの恐怖反応を示すという結果が得られている。現在は各群の3個体目で実験を行っており、終了次第結果をまとめる予定である。 新生児コモンマーモセットを対象として、親からの隔離および隔離後の再接触で活性化する脳部位の検出を行った。新生児個体を生後7日齢まで親に哺育させ、7日齢から9日齢までインキュベーター内に隔離した後、親に再会させる群と隔離のみ行った群に分けて脳を摘出した。現在までに再接触群5個体、隔離群3個体を得ており、脳の切り出しおよびc-Fos染色を行っている。染色および活性化部位の検出は内側視索前野および扁桃体を中心に行っている。また、隔離中の反応をビデオで撮影し、経時的な行動の変化を確認している。現在2個体を並行して確認中であり、今後これまでに撮影しているものに関しても解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
人工哺育個体および親哺育個体への恐怖刺激の提示実験は2020年度中に終了する予定であったが、年度当初に緊急事態宣言により実験を行えなず、月齢の調整が必要な他の実験と時期が重なって同時に進められなかったなどの理由により実験開始が遅れてしまった。そのため、進捗がやや遅れている。 新生児個体の実験に関しては、出産および隔離・再接触は予定通りであったが、上記と同様に緊急事態宣言により灌流以降の作業の開始が遅れ、またその間に上記同様月齢の調整が必要な他の実験と時期が重なるなどの理由から切り出しや染色がまだあまり進んでいない。しかし、こちらについては本年度も実施予定であったため、遅れてはいるもののそれほど大きな遅れではないと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
他の実験において6ヶ月齢~1歳のマーモセットを家族から隔離および再接触させた後に灌流した脳があるので、まずそれらの切り出し・染色を行い、新生児マーモセットの染色部位の検討を行う。上述のように、検討は内側視索前野と扁桃体を中心に行う。その後、新生児マーモセットの脳の切り出しおよびc-Fos染色を行い、親からの隔離および隔離後の再接触により活性化した脳部位の検出を行う。各群に特異的に活性化している脳部位が検出されれば、親からの隔離および接触を認識している脳部位であると考えられる。 活性化脳部位の比較検討後、生後数日の新生児マーモセットを対象に、各群で活性化していた脳部位に賦活型DREADD(hM3Dq)AAVベクターを注入する。hM3Dq発現後にリガンドを注入し、親からの隔離時および接触時の行動の変化を確認する。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度当初の緊急事態宣言により実験開始が遅れ、脳の染色を行う段階まで実験が進まず、染色に使用する予定であった試薬を当該年度に購入する必要が生じなかった。また、新生児の脳定位手術を行うための固定装置を購入予定であったが、こちらもまだその段階まで実験が進んでいなかったために当該年度に購入する必要が生じなかった。
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