研究課題
大うつ病性障害のある患者385名について、小児逆境的出来事/体験評価尺度(RC-ACEE: Retrospective chart review-based assessment scale for adverse childhood events and experiences; Yamagishi M et al. PCN Reports, 2023)を用いて、診療録情報よりACEsの存在について後方視的に調査した。NIRSを用いて言語流暢性課題中の脳機能の賦活反応性を計測し、ACEs指標との関連について検討した。385名中175名(44.2%)で1つ以上のACEsが存在した。兄弟や同年代の友達からの外傷体験の数が多いほど、内側前頭前皮質領域の賦活反応性が高かった(uncorrected p < 0.05)。親・養育者からの身体的な外傷体験がある群では、ACEsが存在しない群と比較して、左感覚運動野の賦活反応性が低下していた(FDR corrected p < 0.05)。また、統合失調症のある患者26名について、RC-ACEEによりACEsを評価し、MRIを用いて、ACEsとの関連が示唆される領域として、扁桃体、海馬、前帯状皮質の体積との関連を検討した。26名中17名(65.4%)が何らかのACEsを経験していた。ACEsが存在する群では、ない群と比較して右扁桃体の体積減少(uncorrected p < 0.05)を認めた。左扁桃体および左右の海馬、前帯状皮質においては体積変化はみられなかった。本研究より、大うつ病性障害や統合失調症のある患者において、ACEsの経験が脳機能や構造に一定の影響を及ぼしており、また、外傷の様式によりその影響が異なる可能性が示唆された。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件)
精神科
巻: 43 ページ: 125-132
ブリーフサイコセラピー研究
巻: 31 ページ: 37-48
Translational Psychiatry
巻: 13 ページ: -
10.1038/s41398-023-02511-5