研究課題
認知症は世界的に増加傾向で特に少子高齢化が深刻な本邦では社会的な負担が増大している。病初期から治療介入することで疾患の進行を遅らせられる可能性があり、早期に診断を確定させ適切な管理をすることで介護者の負担を大幅に軽減させることができる。特に、三大認知症の一つで、神経病理診断では認知症の20%を占めると報告されているレビー小体型認知症は、抑うつ気分、幻視などの精神症状、自律神経症状による易転倒性、失神などの特徴がありマネジメントに特有の工夫が必要であるが経過の中で臨床症状の現れ方に個人差が大きく診断の見逃しが少なくない。近年、脳ドパミントランスポーターシンチなど有力なバイオマーカーが開発されているが高額な費用や利用可能な施設が限られるなどの限界がある。本研究では、安価で低侵襲に施行でき本邦に広く普及している脳波検査を用いて、特別な設備を備えていない一般施設でも臨床応用可能な、認知症疾患の鑑別診断および予後予測に有用な客観的なバイオマーカーを得ることを目的とする。本研究に関連して、当院脳外科との共同研究で、安静時の臨床脳波からレビー小体型認知症を含む認知症疾患と健常者を識別する深層学習モデルの開発に携わり、その成果が国際学術誌(Neuropsychobiology誌)に掲載された。健常者とレビー小体型認知症の識別において、正確性94%、AUC:0.99という高精度で識別できることを報告した。
2: おおむね順調に進展している
当科(大阪大学医学部附属病院神経科精神科)の外来、入院にて対象患者をリクルートし脳波検査を継続的に行っている。当科では、認知症疑いの受診患者に対し、頭部画像検査(頭部MRI、脳SPECT、必要に応じて、脳ドパミントランスポーターシンチなど)、神経心理検査(MMSE、ADAS、CDR、NPI、必要に応じて、RBMT、WMS-R、TMTなど)、血液検査(甲状腺機能、ビタミン類まで含む)を原則実施しており、症例の蓄積を続けている。
各種検査を行った対象症例の蓄積を進め、脳波解析を進めていく。
コロナの感染拡大の影響で学会出張などの予定が変更となった。患者の研究エントリーは順調に進んでおり、測定に伴う経費として使用することを検討している。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件)
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