研究課題/領域番号 |
20K16652
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
田山 真矢 札幌医科大学, 医学部, 研究員 (20718027)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アルコール依存症 / 胎児性アルコールスペクトラム障害 / 飲酒欲求 / 妊娠 / 性ホルモン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、妊娠による身体的、精神的、生物学的変化が飲酒欲求に与える影響を解析し、新たなアルコール依存症の治療法を確立することである。アルコール依存症は強い渇望により飲酒を繰り返してしまうことが特徴であり、特に、妊娠期間中の飲酒は胎児への影響が著しく、胎児性アルコールスペクトラム障害(Fetal Alcohol Spectrum Disorders:FASD)が誘発される。通常、アルコール依存症の治療には認知行動療法や集団精神療法などにより、自身の飲酒行動を振り返り、アルコールの無い生活を送る訓練をしていくのが一般的な治療法であるが、妊婦はアルコール依存症の場合でも、妊婦期間中は断酒を継続できているケースが認められ、「妊娠」の飲酒欲求低下効果が推察される。 この妊娠期間中に飲酒欲求が無くなる時期と母体に生じる生理的変化との関連を明確し、臨床に応用することが出来れば、アルコール依存症患者の治療に大きな貢献ができるものと考えられる。 その為には、まず妊娠期間中の飲酒行動や飲酒欲求を明らかにする必要があるため、初年度は女性のアルコール依存症患者に対して妊娠前や妊娠中、出産後の飲酒量や飲酒欲求、胎児への影響の知識の有無、その他妊娠期間中に生じた身体的、精神的変化等について聞き取り調査を行うためのアンケート作成を行った。その結果を基に、飲酒欲求や飲酒行動の変化が生じる時期と、その時期に起こる身体的、精神的、生理学的変化との関連性を分析し、飲酒欲求へ影響を与えうる要因を検討を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、アルコール依存症者における妊娠期間中の飲酒行動や飲酒欲求の変化を調査し、飲酒欲求が消失する時期や要因を明らかにし、アルコール依存症の新たな治療法を確立するための基礎的なデータを得る事である。 初年度は女性のアルコール依存症患者に対して妊娠前や妊娠中、出産後の飲酒量や飲酒欲求、胎児への影響の知識の有無、その他妊娠期間中に生じた身体的、精神的変化等について聞き取り調査を行うためのアンケート作成を行った。しかしながら、新型コロナウィルス蔓延のため、新規患者の受け入れや治療プログラム、心理検査等の制限などにより、研究協力者を確保が不十分であった。
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今後の研究の推進方策 |
女性のアルコール依存症患者に対する妊娠前や妊娠中、出産後の飲酒量や飲酒欲求、胎児への影響の知識の有無、その他妊娠期間中に生じた身体的、精神的変化等についてのアンケートや聞き取り調査を継続しつつ、妊娠中の飲酒欲求や行動を解析するため、Goldsteinの方法を用い、ラットに、アルコール蒸気(120mg ethanol/ 10L/min)を8日間連続で吸入させてアルコール依存症モデルラットを作成する。その後、妊娠群と非妊娠群に分けて妊娠前と妊娠後のアルコールの摂取量や飲酒行動の変化を検討するとともに、出産後にはリトリービング行動やリッキング行動の正確性や出現頻度の比較検討を行う。また、非アルコール依存症群として生理食塩水にて同様の処置を施したラットを使用し、妊娠群、非妊娠群との比較検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
購入器具等の見積もりとの差異が生じたため、次年度以降の行動解析で追加購入し、使用していく予定である。
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