研究課題/領域番号 |
20K16653
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
岡崎 康輔 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (70736925)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 自閉スペクトラム症 / 性差 / 逆境的小児期体験 / 事象関連電位 / 眼球運動 / ロールシャッハテスト |
研究実績の概要 |
自閉スペクトラム症 (Autism Spectrum Disorder:ASD)は神経発達症の一つであるが、その有病率の性差は著明であり、またASD症状の顕著な性差も知られている。ASDを有する者は虐待などの逆境的な小児期体験(Adverse Childhood Experience:ACE)を経験することが多く、のちのASD症状に影響を与えることも知られている。このようにASD症状形成には性差やACEが影響し、ASDの異質性を高める要因であることが報告されている。申請者及び我々のグループは、これまで児童思春期の精神疾患・発達障害に焦点をあて、事象関連電位や近赤外線スペクトロスコピィを用いてASDなどの発達障害の脳機能不全を研究しており、これらの生物学的指標が診断の補助的役割を担う可能性について検討してきた。また、申請者は、事象関連電位を用いた研究において、小児期の性的虐待の体験が成人期ASDの脳機能に影響を及ぼす可能性、また、ASDと定型発達では成人期の脳機能に影響しうる因子が異なることを報告している。 令和3年度において、令和2年度に引き続き、奈良県立医科大学精神科にASDの診断にて外来通院中の患者から、本研究への参加に同意を得られた被験者に対して、頭部MRI検査、事象関連電位、近赤外線スペクトロスコピィ、眼球運動検査、血液検査、心理検査の実施を行い、データの取得を行った。また、ASDの被験者と同様に、健常対照のリクルートならびにデータ取得を行った。ロールシャッハテスト中の視線活動において、特定の図版に対する注視時間及びサッカード回数が、ASD群と健常対照群との間に有意差を認めた。また、 これらの指標は、AUC 0.65程度の判別精度を有することが示された。引き続き、ASD及び健常対照のデータ取得を行い、解析を行っていく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19感染症対策を実施することにより、本申請の目標の被験者数のデータ取得を順調に遂行できている。 また、得られた心理学的評価及び生理学的評価について解析を行うことにより、ASDと健常対照を判別する上で、有用な特徴量を見出すことができており、本研究課題の目的達成に向け、順調に課題を進展することができていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに取得した心理学的データ、脳画像データならびに生理学的検査データをASD群と健常対照群で比較検討を行う。 また、これらのデータと逆境的小児期体験、性差との相互的な関係について解析を行っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
前年度までにおいて、COVID-19感染症拡大に伴い、国際学会および国内学会への現地参加の機会がなかったため。
|