研究実績の概要 |
気分症と概日機構の関連を示唆する知見が増加しつつあるが、臨床で簡便に利用可能な概日指標の確立には至っていない。我々はこれまでに、深部体温リズムやメラトニン分泌リズムといった概日指標と関連して日内変動を示すことが知られる秒単位の時間認知が、気分症の症候、及びうつ病相の治療反応性と関連することを見出している。光は概日機構の最も強力な同調因子であるが、時間認知への影響については検討が乏しい。本研究は、クロスオーバーデザインを用いて、2日間にわたり光の概日リズムへの影響が弱まる日中に、高照度光もしくは低照度光への曝露下において、時間産出法により10秒の時間認知を定量化し、光照度の時間認知への影響を健常人(26名)において検討した。高照度光条件(high-intensity light: HL)及び低照度光条件(low-intensity light: LL)における光照度はそれぞれ平均9,151 lux及び445 luxであった。HL-LL群における産出時間は、HL条件:11.87秒、LL条件:11.08秒、LL-HL群における産出時間は、HL条件:12.71秒、LL条件:11. 98秒であった。これらの産出時間はLL条件に比べHL条件で平均6.6%長かった。秒単位の時間認知は概日機構に紐づいた生物学的指標として気分症の病態理解に有用と考えられた。
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