研究課題/領域番号 |
20K16660
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
河上 緒 公益財団法人東京都医学総合研究所, 脳・神経科学研究分野, 研究員 (60748838)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 前頭側頭葉変性症 / 神経病理 / 神経画像 / 神経線維連絡 / プリオン様伝播 |
研究実績の概要 |
物忘れ外来を受診したfrontotemporal lobar degeneration(FTLD)症例のうちsemantic variant primary progressive aphasia(svPPA)に焦点を当て、最初期の症状を抽出した。臨床症状の抽出には、各種臨床診断基準の各項目を参照し、症例に応じて失語症検査も実施した。初診時に全例MRIを撮影し、半年おきに経時的に評価を行い、voxel based morphometry(VBM)による解析を行ったところ、既報告同様、初期から左優位に側頭極は萎縮していたが、扁桃体においても高度萎縮を示す症例が多く、最初期病変がどこであるのかを解析中である。さらに拡散テンソル画像(Diffusion tensor imaging, DTI)において、連合線維である鉤状束や下縦束における変性が示唆され、これらの線維連絡によって左側頭葉から変性蛋白が伝播していることが予想される。 病理確定例に対し、臨床症状、神経画像を確認するとともに、各脳領域の神経病理学的解析を行った。萎縮の高度な側頭葉極をはじめとする初期に進展する領域では、グリア細胞質内陽性封入体や太い変性突起が多く、前頭葉穹窿面や頭頂葉などの中期・後期に進展する領域では比較的長い変性突起が多いことが特徴であった。変性突起の数は少ないものの、後頭葉においても確認された。さらにsvPPA疾患脳では、前頭葉穹窿面や頭頂葉などの中期・後期に進展する領域ではTDP-43陽性構造およびグリア増生がII層(短距離を走る連合線維が起始)優位に見られ、III層(長距離の連合線維や交連線維が起始)、IV、V層(大脳基底核領域などへの投射線維が起始)への蓄積は軽度であることも判明した。生化学的解析では、解析部位すべてにおいて蓄積しているTDP-43のバンドパターンは同じ(Type C型)であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は研究代表者が臨床例を実際に診療しながら、病理解析もしているという点から効率的に研究が進んだものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は処理すべき神経画像データも増えることから、筑波大学をはじめとする共同研究先と神経画像解析に関してさらなる連携が望まれる。また、神経画像を経時的に評価している病理診断確定症例が非常に少なく、臨床例のVBMやDTIが実際の病理を反映しているかが不明であることから、多数例の保管がある欧米の研究機関と共同研究を行うことも視野に入れている。
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次年度使用額が生じた理由 |
20年度はコロナ禍という社会情勢から旅費は支出しなかった。次年度は、神経画像用のパソコンやソフトの購入、神経病理解析用の試薬購入、論文投稿代、英文校正代などを予定している。
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