研究課題/領域番号 |
20K16665
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
榊原 英輔 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (00717035)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 近赤外線スペクトロスコピー / 安静時機能的結合 / 大うつ病性障害 / 統合失調症 / 偏相関分析 |
研究実績の概要 |
近赤外線スペクトロスコピー(NIRS)装置(ETG-4000)を2台用い、頭部全周性に89Chで大脳皮質の血液酸素化信号を測定できるNIRS装置を組み、8分間の安静時脳活動を測定し、既に確立された解析法を用いて、17の脳領域間の安静時機能的結合(RSFC)を比較した。健常者90名と、24名の統合失調症患者の17の脳領域間のRSFCを比較したところ、両側眼窩部前頭前野間のRSFCと、右の頭頂葉と側頭葉をつなぐRSFCが患者群で有意に高いことが示された。統合失調症群の平均年齢は24.1±6.1歳、健常群の平均年齢は37.0±7.4歳であり、有位に健常群の方が年齢が高かったため、共分散分析(ANCOVA)の手法を用いて、年齢の影響を除去した群間比較を行ったところ、同部位のRSFCの群間差は残存した。 患者群において、両側眼窩部前頭前野間のRSFCは、PANSSの陰性症状尺度と正に相関し、右の頭頂葉と側頭葉をつなぐRSFCは抗精神病薬内服量のクロルプロマジン換算量と正の相関が見られた。このため、両側眼窩部前頭前野間のRSFCの亢進は、統合失調症群における感情制御や意思決定メカニズムの異常を反映している可能性がある。 加えて、ETG-4000の装置1台で計測が可能な前頭側頭部の52Chの血液酸素化信号を用い、前頭葉、頭頂葉、側頭葉間のRSFCを推定したところ、89Chの信号を用いて頭部全周性に血液酸素化信号を測定したうえでRSFCを推定した場合と比べ、頭頂葉を含まない脳領域間のRSFCについては、一致度が高いことが分かった。これはNIRSによって前頭側頭部のRSFCの測定が簡易に行えることを示唆する結果である。にこれらの成果をまとめ、現在論文投稿を準備している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナ禍の影響で、統合失調症患者の研究リクルートが目標数に達せず、解析が進まなかった。しかし、2023年3月の時点で、ようやく統合失調症におけるRSFCについても論文投稿の準備が整いつつある。研究期間は当初2022年度までであったが、2023年度までに延長を申請した。
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今後の研究の推進方策 |
研究期間を2023年度まで延長し、統合失調症の研究結果の出版後は、双極性障害群のデータの検討、並びに語流暢性課題とRSFCの所見の関係の検討を行っていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
国内外の学会に参加する目的で、旅費の請求をしていたが、コロナ禍の影響で学会参加がZoomで行われることが増え、海外学会への参加が困難になってしまったため、大幅な次年度使用額が生じた。残っている研究費に関しては、英文校正や論文掲載料に充てるほか、2023年度以降に海外学会への出張費用に充てていく計画である。
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