統合失調症は社会的機能が低下する精神疾患であり、病態解明が急がれる疾患の一つである。一卵性双生児統合失調症不一致例3組のリンパ芽球様細胞を用いてmRNA発現解析を行い、そこから、一卵性双生児統合失調症不一致例に分子生物学的な差異が存在すること、さらに、不一致例内の統合失調症罹患双生児全員においてDPYDの発現低下を認め、DPYDが統合失調症の有力な候補遺伝子であることを示した。本研究では、末梢血からリンパ芽球様細胞を作製し、DPYDの発現解析を統合失調症患者19名(男性6名、女性13名)と健常対象者18名(男性6名、女性12名)に対して行った。発現解析の結果では、統合失調症群と健常対象群のDPYDの発現量に有意差は認めなかった。男女別に解析を行うと、女性において、ACTH補正では有意ではなかったが、GAPDH補正において有意となった。しかし、統合失調症女性患者群においてDPYD発現量が多いという結果であり、既知の一卵性双生児統合失調症不一例において統合失調症罹患双生児においてDPYDのmRNA発現が低かったという結果とは逆方向の結果となった。また、DPYD遺伝子多型がDPD活性に与えることが知られているが、一卵性双生児統合失調症不一例3組の末梢血白血球由来のゲノムDNAにおいて、エクソン解析を行った結果からは、罹患双生児と非罹患双生児のDPYDエクソン領域内に塩基配列の差異は明らかとならず、DPD活性に影響を与える原因は特定できなかった。
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