研究実績の概要 |
遺伝子操作にてKCNS3遺伝子の蛋白質コードエクソンの上流にバクテリア由来のネオマイシン耐性遺伝子を挿入しKCNS3遺伝子の活性を抑制したKcns3-neoマウスを用いて、パルブアルブミン陽性ニューロン(PVニューロン)における遺伝子発現の変化を調べた。このマウス系統では、既にin situ hybridization法によってPVニューロンにおけるKcns3 mRNAの発現が、対立遺伝子の片方または両方が抑制されているヘテロ型およびホモ型において、同系統の野生型に比べ、それぞれ21%および45-58%低下していることが確かめられている。この系統の野生型(n=5)、ヘテロ型(n=5)、ホモ型(n=5)のそれぞれのマウスより、前頭部大脳皮質組織を切り出し、RNAを抽出した。このサンプルを用いてKcns3およびPVの発現をreal-time PCRで計測した。各mRNAの発現レベルは同時に増幅した内部標準遺伝子(cyclophilin, beta-actin, GAPDH)の発現レベルに標準化して求めた。その結果Kcns3 mRNAの発現は、野生型に比べヘテロ型で26%、ホモ型で46%低下しておりin situ hybridization法の結果と同様であった。一方で、PV mRNAの発現レベルは、野生が屋3遺伝子型の間で有意な差は認められなかった(F2,12 =0.96, P=0.41)。またこれらのマウスの前頭葉の切片を用いPVニューロンにおけるKcns3と結合しカリウムチャネルを構成するKcnb1の発現を2重標識in situ hybridization法で評価した。その結果Kcnb1 mRNAの発現にも遺伝子型間で有意な差は認められなかった(F2,12=0.15, P=0.86)。
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