本研究では独居の軽度認知障害者を経時的に観察し、同居者がいる場合と比べて認知機能や神経画像などの脳機能がどのように変化するか解明することが目的で ある。 本年度は、前年度までにリクルートされたデータおよびデータベースに登録されているデータの内から軽度認知障害で頭部MRI画像および脳血流シンチのデータが有効であった75例を対象に脳画像解析を行った。独居および非独居という生活環境における孤立と抑うつの指標に有意な相関は認めたものの、孤立と頭部画像所見の間には明らかな萎縮や局所脳血流の変化といった所見は見られなかった。しかし、孤立と近い概念ではあるがより主観的である孤独の指標をUCLA孤独感評価尺度第3版を用いて収集し、それと脳画像との関連を見たところ、MRIでの検討においても脳血流シンチにおける検討においても、広範囲にわたる脳領域において孤独が強いほど萎縮や血流低下が見られるという結果が得られた。 健常高齢者の研究では孤独が認知機能にもたらす影響についていくつかの知見が報告されている。認知症へのリスクが高まるという報告もあるが、それが実際に脳機能に対してどのような影響を及ぼしているか、画像解析で検討した研究は少ない。そしてそれが軽度認知障害者において検討された例はいまのところない。今回の研究結果から、実際に軽度認知障害者においても広範な脳領域において形態や機能に異常をきたしうるということがわかった。現在論文執筆を行っており、間もなく投稿の予定となっている。
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