研究課題
2021年度は(1) Ngn2レンチウイルスベクターを用いた双極性障害患者由来iPS細胞の神経細胞の分化誘導 と、(2)その双極性障害患者由来分化誘導神経細胞のカルシウム指示薬Fluo4AMを用いたカルシウムイメージング、(3) エレクトロポレーションによるヒトiPS細胞のAAVS1座位への遺伝子挿入の予備実験、(4)プラスミドベクターのクローニングを行った。(1) (2)前年度確立したヒトiPS細胞の分化誘導方法を用いた。研究対象としている双極性障害・反復性うつ病多発家系の患者由来iPS細胞を神経細胞に分化誘導し、培養30日目にFluo4AMを添加し、カルシウムイメージングを行い、神経活動性を観察した。健常者由来の神経細胞に比べて、スパイクの頻度が高かった。(3) ヒトiPS細胞への遺伝子ノックインの予備実験を行った。AAVS1座位をターゲットにしたgRNAとCas9のプラスミド、およびターゲット部のホモロジー配列でEGFPを挟んだドナープラスミドをヒトiPS細胞にエレクトロポレーションでコトランスフェクションし、EGFPのノックインに成功した。(4)3に続いて、カルシウム指示改変蛋白質jGCaMPのドナープラスミドのクローニングを開始し、現在進行中である。
3: やや遅れている
2020年度に続き、新型コロナウイルス感染症の流行により、実験の中断と研究室メンバーの休業などが重なり、本研究の実施に必要な時間を大幅に削減せざるを得なかった。
本研究は双極性障害iPS細胞由来神経細胞のカルシウムイオン濃度変動を、長期培養しながら解析することを目標にしている。進行は遅れているが、これまでの過程に大きな問題はない。したがって、今後は計画を順次進めていく。まずjGCaMP7ドナープラスミドのクローニングを完成させ、EGFPで予備実験をしたようにエレクトロポレーションでヒトiPS細胞にjGCaMP7をノックインする。つづいて、確立したNgn2レンチウイルスベクターによる神経細胞分化誘導を行い、培養下にカルシウム濃度を観察する。セロトニンなどポジティブコントロールの刺激で細胞内カルシウム濃度の変動を観察できることを確認する。ここまでが完成したら双極性障害患者由来iPS細胞で同様のことを行い、細胞内カルシウムイオンの詳細な解析を行っていく。
2021年度は新型コロナウイルス感染症の流行により、研究を縮小しており、予定額を使用しなかった。来年度は、iPS細胞のゲノム編集実験などを計画通り遂行していく。
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Journal of Affective Disorders
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