研究課題
本研究は双極性障害患者iPS細胞由来神経細胞の細胞表現型を明らかにし、将来的に創薬・病態研究につながる双極性障害モデル細胞の創出を目指した。【最終年度に実施した研究の成果】(1) 双極性障害・反復性うつ病多発家系由来iPS細胞のクオリティ確認と公開: 双極性障害・反復性うつ病多発家系(Takamatsuら、J Affect Disord、2022)の3世代3名の患者のiPS細胞について未分化性と三胚葉分化能を確認した。学術誌に投稿し、貴重な双極性障害家系由来iPS細胞のリソースとして公開した(Takamatsuら、Stem Cell Res、2022)。(2)ヒトiPS細胞にjGCaMP7をノックインするプラスミドの構築:双極性障害iPS細胞由来神経細胞を長期培養しながら、自発発火頻度の継時変化や神経伝達物質への反応性を検証することを目的に、カルシウム指示蛍光蛋白質jGCaMP7をノックインしたiPS細胞の作成を行った。しかし、構築したプラスミドをゲノムDNAに挿入するところでおそらく導入効率が障害となり、恒常的発現細胞がとれず最終年度内に完成しなかった。【研究期間全体の成果と意義、重要性】双極性障害神経細胞にCa2+動態の異常を考え研究を開始し、培養30日目のCa2+イメージングで双極性障害iPS細胞由来神経細胞の自発発火頻度の亢進を認めた。計画ではさらに長期培養による自発発火頻度の継時変化やセロトニンなどの神経伝達物質への反応性を検証することを目指したが、期間内に完了しなかった。しかし、本研究の成果により双極性障害の細胞表現型に一定の知見を得た。今後も継時変化や反応性に着目することで重要な発見がある可能性がある。また本研究に用いた稀な双極性障害多発家系由来iPS細胞をリソースとして学術誌に公開した。今後、様々な機関や企業と共同で、創薬・病態研究の発展が期待できる。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件)
Stem Cell Research
巻: 64 ページ: 102915~102915
10.1016/j.scr.2022.102915
Journal of Affective Disorders
巻: 310 ページ: 96~105
10.1016/j.jad.2022.04.150