研究課題/領域番号 |
20K16679
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研究機関 | 藤田医科大学 |
研究代表者 |
國澤 和生 藤田医科大学, 保健学研究科, 助教 (60780773)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ユビキチン化酵素 / 前頭前皮質 / アデノ随伴ウイルス / うつ病 / ストレス / Nedd4L |
研究実績の概要 |
高ストレス社会が進行している現代日本において、うつ病の急増は重大な社会問題であり克服すべき課題である。しかし、うつ病の病態機構は未だ不明であり、新たな創薬標的に基づいた治療薬開発が求められている。ユビキチン修飾系は生体内において蛋白分解や局在変化など多様な生命現象に関与している。我々は慢性ストレス負荷により作製したうつ病モデル動物において、ユビキチン化関連酵素Nedd4Lが発現低下することを発見した。さらに、Nedd4Lのユビキチン化標的蛋白としてグルタミン酸トランスポーター(GLT-1)を同定し、GLT-1のユビキチン化が著しく低下していることを見出した。本研究では、うつ病におけるNedd4L-GLT-1の異常が当疾患の病態形成に寄与するか明らかにする。 本年度は、初めに慢性ストレス負荷により生じるGLT-1のユビキチン化低下(GLT-1の細胞膜発現の増加)がグルタミン酸神経系に機能低下をもたらし、病態形成に関与するか明らかにした。前頭前皮質においてグルタミン酸神経系の神経活動ならびにグルタミン酸の細胞外遊離量を測定した結果、慢性ストレス負荷によりグルタミン酸神経系の神経活動の低下が認められると共に、グルタミン酸の細胞外遊離量の有意な低下が認められた。さらに、これら影響はGLT-1阻害剤投与により有意に拮抗された。以上のことから、慢性ストレス負荷により認められるグルタミン酸神経系の機能低下はGLT-1のユビキチン化低下に依存する可能性が示唆された。 さらに、うつ病モデル動物においてNedd4Lに対するshRNAを組み込んだアデノ随伴ウイルスベクターを用いて、前頭前皮質特異的にNedd4Lをノックダウンしたところ、うつ様行動のさらなる増悪傾向が認められた。このことから、Nedd4Lの発現低下がうつ病の病態形成に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、うつ病の病態形成におけるNee4Lの役割を明らかにすることに成功し、当該発症機序にグルタミン酸神経系が関与することを示唆するデータを得ることが出来たため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アデノ随伴ウイルスを用いたNeed4Lの過剰発現によりうつ様行動が緩解するか明らかにすることで、Need4Lの役割をさらに明らかにする予定である。加えて、Nedd4L-GLT-1の相互作用を初代培養アストロサイトを用いて検討することでうつ病の病態形成機序を明らかにする予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
翌年度に使用する一般試薬類が多岐に渡ると予想され、前年度の購入分を控えることで補填するため。
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