研究課題
高ストレス社会が進行している現代日本において、うつ病の急増は重大な社会問題であり克服すべき課題である。しかし、うつ病の病態機構は未だ不明であり、新たな創薬標的に基づいた治療薬開発が求められている。ユビキチン修飾系は生体内において蛋白分解や局在変化など多様な生命現象に関与している。我々は、昨年度までにうつ病モデル動物において、1)ユビキチン化関連酵素Nedd4Lが発現低下すること、2)前頭前皮質特異的にNedd4Lをノックダウンしたところ、うつ様行動のさらなる増悪傾向が認めらることを明らかにした。本年度は、アデノ随伴ウイルスベクターを用いて、慢性ストレス負荷後にNedd4Lを前頭前皮質特異的に過剰発現した際にうつ様行動が緩解するか探索した。アデノ随伴ウイルスベクターを注入後、前頭前皮質においてNedd4Lが過剰発現されていることをWetern blottingにより確認した。興味深いことに、ストレス負荷を行っていないマウスに対し、Nedd4Lを過剰発現したのみであっても社会性試験において社会性の有意な増加が認められた。さらに、ストレス負荷後にNedd4Lを過剰発現させた際では、ストレス負荷により認められた社会性の低下が有意に改善することが明らかとなった。さらにNedd4L増加に付随して、ユビキチン化GLT-1の増加も認められた。以上のことから、Nedd4Lは社会性行動の制御に関与することが明らかとなった。加えて、Nedd4Lの社会性行動の制御の一端にGLT-1のユビキチン化機構が関与すること示唆され、当該機構がうつ病の新規治療標的となり得る可能性を見出した。
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