研究課題
【目的】免疫と精神疾患の関わりについては、以前より指摘されている。免疫と精神疾患の直接的な関わり、その機序については依然として明らかとなっていない。我々は炎症性サイトカインであるインターロイキン18(IL18)の欠損下では海馬機能不全となり、うつ病様行動変化を呈する事を発見した。また前頭前野において中枢神経細胞にIL18が発現していることが明らかになっている。しかしながら、IL18を含めた脳内炎症、精神疾患を発症する機序については明らかとなっていない。そこで本研究は、IL18を中心にストレス起因性による脳内炎症へ波及する機序の解明を目的とした。【方法】野生型、およびIL18欠損マウスの雄を使用し、以下の処置を行った。これらのマウスに6時間の急性ストレス処置(拘束処置)を付与し、18時間後に行動学的変化、海馬におけるサイトカイン発現差、ミクログリア、アストロサイトの細胞数や形態などを観察した。さらにストレス負荷によるコルチコステロンの変化や海馬におけるグルココルチコイド受容体変化を観察した。【結果】IL18欠損マウスにおいて急性ストレス後、強制水泳試験、尾懸垂試験において、活動量の増加がみられ、不安様行動変化が観察された。IL18欠損マウスにストレスを負荷した群では海馬においてIL1β、IL6、Tnfαの発現の上昇が観察され、さらにミクログリアの増加、活性型への形態変化、アストロサイトの増加も観察された。これらの変化は野生型マウスでは観察されなかった。急性ストレス負荷にて、血清コルチコステロンの上昇を認めたが、IL18欠損マウスは野生型に比べさらなる上昇を認めた。さらにIL18欠損マウスでは、グルココルチコイド受容体のリン酸化が有意に上昇していた。本研究結果より、IL18がストレス反応に対する脳内炎症の重要な調整因子である可能性が示唆された。
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Translational Psychiatry
巻: 12 ページ: 1-10
10.1038/s41398-022-02175-7