研究課題/領域番号 |
20K16681
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
松岡 究 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子医科学研究所 脳機能イメージング研究部, 研究員 (80613794)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | アパシー / タウ / PM-PBB3 / MRS / グルタチオン / 認知症 |
研究実績の概要 |
国内の40を超える医療機関と連携することで、アルツハイマー病や進行性核上性麻痺などの認知症患者や高齢健常者のリクルートや検査の実施を行った。このなかの、進行性核上性麻痺患者や高齢健常者を対象として、[18F]PM-PBB3を用いたPET検査により評価したタウタンパク集積、MRSにより評価したグルタチオン濃度、MRI T1強調画像により評価した脳容積とアパシーの関連について検討を行った。 結果として、後部帯状回におけるグルタチオン濃度とアパシースケールスコアに負の相関がみられ、酸化ストレスとアパシーの関連が示唆された。さらに、角回における[18F]PM-PBB3のstandard uptake value ratio(SUVR)値とアパシースケールスコアに正の相関がみられ、タウタンパク集積とアパシーの関連が示唆された。これらの脳後方部の変化に加えて、右側下前頭回や前部帯状回の脳容積とアパシーの相関がみられ、脳前方部と後方部の変化がアパシーの程度にもたらす影響についてパス解析を用いたモデルを作成することができた。また、グルタチオン濃度と[18F]PM-PBB3のSUVR値にも負の相関がみられ、タウタンパク集積が酸化ストレスにもたらす影響を生体脳においてとらえることができた。本検討を通じて、脳の前方部と後方部の構造・機能変化がアパシーにもたらす影響を網羅的に調べることができた。 本研究結果について、J Neurol Sci誌(査読あり)に掲載された(doi: 10.1016/j.jns.2022.120514)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内の40を超える医療機関と連携し、アルツハイマー病や進行性核上性麻痺などの認知症患者や高齢健常者のリクルートや検査を実施した。このなかの、進行性核上性麻痺患者や高齢健常者を対象として、[18F]PM-PBB3を用いたPET検査により評価したタウタンパク集積、MRSにより評価したグルタチオン濃度、MRI T1強調画像により評価した脳容積とアパシーの関連について検討を行った。アパシーの程度については、アパシースケールを用いて評価した。 結果として、後部帯状回におけるグルタチオン濃度とアパシースケールスコアに負の相関がみられ、酸化ストレスとアパシーの関連が示唆された。さらに、角回における[18F]PM-PBB3のstandard uptake value ratio(SUVR)値とアパシースケールスコアに正の相関がみられ、タウタンパク集積とアパシーの関連が示唆された。これらの脳後方部の変化に加えて、右側下前頭回や前部帯状回の脳容積とアパシーの相関がみられ、これらの脳前方部と後方部の変化がアパシーの程度にもたらす影響についてパス解析を用いたモデルを作成することができた。また、グルタチオン濃度と[18F]PM-PBB3のSUVR値にも負の相関がみられ、タウタンパク集積が酸化ストレスにもたらす影響を生体脳においてとらえることができた。本検討を通じて、脳の前方部と後方部の構造・機能変化がアパシーにもたらす影響を網羅的に調べることができた。 令和2年の実施報告で計画した通り、令和3年度では、本研究結果について、J Neurol Sci誌(査読あり)に掲載された(doi: 10.1016/j.jns.2022.120514)。
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今後の研究の推進方策 |
アルツハイマー病などの他認知症疾患患者のリクルートや検査の実施を継続し、アルツハイマー病などの他認知症疾患におけるアパシーの機序についても検討を行う。シングルボクセルMRS以外に、マルチボクセルMRSを用いた多領域における脳内代謝物を評価する。脳内代謝物濃度と、アパシーなどの症状や、[11C]PiBや[18F]PM-PBB3を用いたPET検査によりアミロイドβ、タウなどの異常タンパク集積との関連を調べる。
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次年度使用額が生じた理由 |
既存の設備や研究体制を利用することにより、新たな購入や人件費の発生の必要なく、研究を遂行することができたため。 令和5年度は計画的な使用を準備する。
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