研究課題
アパシーは目標指向性の低下を特徴とし、患者の生活の質を低下させると同時に、介護者の負担も増加させる症状である。しかし、アパシーのメカニズムにはまだ解明されていない部分が多く、治療法も確立されていない。これまでアパシーと関連する脳の部位としては、主に前部帯状回や背外側前頭前野などの前方の脳部位が注目されてきたが、最近では、脳の後方部位の関与も明らかになってきている。本研究において、我々は脳の後方部位とアパシーとの関係について調査を行った。進行性核上性麻痺(PSP)患者20名と健常者23名を対象とした。本研究では、florzolotau F 18を用いたPET検査によりタウタンパク集積の評価を、MRSにより酸化ストレスマーカーであるグルタチオン濃度の評価を、MRI T1強調画像による脳容積の測定を行い、アパシーとの関連性を調べた。結果として、PSP患者においてはアパシーの重症度と角回のタウタンパク集積量との間に正の相関が見られた。また、抗酸化物質であるグルタチオン(GSH)の濃度が低いほどアパシースコアが高く、タウタンパクとGSH濃度との間には負の相関が確認された。これらの結果は、脳後方部位におけるタウタンパクによる酸化ストレスがアパシーの発症に関連している可能性を示唆している。さらに、右側下前頭回や前部帯状回など、従来からアパシーと関連が指摘されていた前方の脳部位の萎縮とアパシーとの関連も確認され、アパシーと関連する脳領域がより広範にわたることが示された。これらの研究成果は、アパシーの発症メカニズムの解明や治療法の開発に寄与するものと期待される。本研究結果は学術誌に掲載された(Matsuoka K et al. J Neurol Sci. 2023)。
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NeuroImage: Clinical
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Journal of the Neurological Sciences
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