研究課題/領域番号 |
20K16690
|
研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
六本木 麗子 群馬大学, 未来先端研究機構, 助教 (80719857)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 放射線照射 / 認知機能障害 / 海馬 / シナプス / ドレブリン |
研究実績の概要 |
本研究の目的は放射線治療による副作用である認知機能低下についてシナプスたんぱく質レベルからアプローチしてそのメカニズムを解明することである。 令和3年度では前年度での結果を踏まえて特異的な変化があったシナプスたんぱく質を中心に、海馬神経培養細胞を用いて低線量放射線照射の影響を起こるメカニズムについて検討した。低線量の放射線照射によってシナプスを形成するたんぱく質の発現量が細胞の発達過程において変化することが分かった。また照射直後でのDNA損傷について検討した。 炭素線照射による反応時間は照射直後5分から観察された。その後の経過に違いがあるが、6時間後では照射によるDNA損傷が見られなくなった。また、照射後に神経細胞の発達過程を追って、シナプス関連たんぱく質の発現量の変化についても調べた。驚くことにシナプス関連たんぱく質の発現量はDNA損傷が見られたあとの1時間後に変化していることが分かった。これらの結果により、DNA損傷が直接シナプスたんぱく質の発現量に影響している可能性があると考えられる。これらの成果は第11回国際放射線神経生物学会にて口演で発表した。令和3年度の前半はコロナ禍により試薬の入荷延期などが相次いだが、後半ではスムーズに研究を継続し、遅れを取り戻している。しかしながら、まだ課題が残っているので、令和4年へ一年間延長で本課題を継続する予定である。またマウス胎児での放射線影響について行動実験を匹数を追加し確認する。行動実験後は脳の海馬を摘出したサンプルを用いてシナプスたんぱく質の定量を測定する。今後の研究展開として、in vivo実験を中心に放射線照射後の脳内のシナプス関連たんぱく質の変化を解析する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の開始からコロナ禍になり、研究進捗に影響が出ている。今年度の後半から研究するための物品や試薬が入り、遅れを取り戻そうとしているがまだ令和3年度の計画が残っている。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度で計画した放射線影響によるシナプス形成の影響について疑似シナプス誘導アッセイを用いて調べる予定でしたが、シナプスの形態を解析したところ変化がなかったことにより中止することにした。その一方で、追加実験として新たな計画を立てた。照射後のDNA損傷とシナプスたんぱく質発現量の変化の時系列が似ていることから、DNA損傷とシナプスたんぱく質の関連が結びつく実験を開始した。具体的にはDNA損傷の経路における拮抗薬/作用薬を用いて、シナプスたんぱく質の発現量に変化があるかを調べる。 これらの実験結果を踏まえて、特異的な変化があったシナプス関連遺伝しまたはたんぱく質を中心に、海馬培養神経細胞を用いたin vitroで放射線照射の影響が起こるメカニズムを探るとともに、in vivoにおいても同様に検証する。具体的には下記の通りに進める。 (1) AMPA受容体やNMDA受容体などの関連が示唆されれば、その受容体のアゴニストやアンタゴニストを利用し、海馬神経培養細胞にアプライして放射線照射による影響の抑制効果を調べる。 (2) 放射線照射による影響がin vitroの実験でシナプスの一連の動態が把握し、(1)でキーとなるアゴニストまたはアンタゴニストをマウス個体に投与し、認知機能や記憶を評価するバーンズ迷路など行動テストを行う。試薬を投与することで放射線照射による認知機能の低下を改善できるかを検討する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究の開始からコロナ禍になり、研究進捗に影響が出ている。今年度の後半から研究するための物品や試薬が入り、遅れを取り戻そうとしているがまだ令和3年度の計画が残っている。次年度における経費の使用計画として主に下記の3つとする。 ①残っている計画の実験を遂行するために消耗品や試薬の購入をする。 ②本研究課題の成果をまとめて論文にするための投稿費用。 ③これまで現地開催されなかった国際学会に出席して発表を行うための旅費。
|