研究課題
シンチレーターで検出する現行の放射線イメージングではエネルギー(波長)分解能が低く、in vitroの蛍光プローブによる分子イメージングで行われるようなマルチプローブ・イメージングは困難であり、一般に空間分解能も低いのが現状である。我々はCdTe半導体検出器を用いた高空間分解能・高エネルギー分解能を有するSPECTを開発した。このSPECTを用い、さらに天文学で用いられているスペクトル解析手法を併用することで、複数の放射性同位元素由来のスペクトルを完全に分離する手法を確立する(目的①)。この手法を用いて、担癌マウスを用いたリンパ節微小転移巣とその転移リンパ節をそれぞれ異なる放射性プローブを用いて同時にイメージングすることが可能であるかを検証する(目的②)。初年度では目的①に関する実験を用いて行ったが、2年目では得られたデータを用い、fittingの手法を併用しデータ解析を行うことで、多核種それぞれのスペクトルやバックグランドのスペクトルを同定することに成功した。それにより、ノイズの低減や定量性の向上が得られた。結果をまとめ、論文投稿した。さらに、目的2に関する実験を進めた。トレーサーである放射性ヨウ素を取り込むがん細胞(NIS過剰発現癌細胞)とヌードマウスを用いてリンパ節微小転移モデルを構築した。このモデルを用いて微小転移巣を放射性ヨウ素で、リンパ流路をテクネチウム・フィチン酸を用いて2核種イメージングをおこなった。微小転移巣とリンパ流路の画像化が可能であることを確認した。当該部位の組織切片画像を解析した結果、SPECTで得られた画像と矛盾しない結果であることを確認した。今後はサンプル数を増やすとともに解析を進め、学会発表と論文投稿を行う予定である。また、開発したイメージング手法の導出として薬物動態イメージングのためのマウス用イメージャーを開発することとした。
2: おおむね順調に進展している
本研究に関しては当初の計画どおりであるが、本研究の成果であるイメージング手法の導出先としてプラナーイメージャーを新たに開発することとした。このイメージャーは2次元画像しか得られないが、代わりに視野が広く、ダイナミックイメージングの取得も可能であり、簡易的な薬物動態を解析することが可能な性能を設定した。このイメージャーは完成しており、SPECT実験と並行して実験を行う。
すでに当初の目的とした最終段階の実験(2核種微小リンパ節転移巣・リンパ流路イメージング)が可能であることは示されており、同様の実験を行いサンプル数を増やすと共に、解析を進め、成果を論文をまとめる予定である。
コロナの影響で出張が想定以下の頻度であったこと。また、動物実験施設として使用させていただいている共同研究先の動物実験施設がコロナの影響で立ち入り制限があり、その分、実験系核の遂行に影響の出ない程度ではあるが多少、動物実験を減らしたことが挙げられる。
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Nature Biomedical Engineering
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10.1038/s41551-022-00866-6.
https://www.ipmu.jp/ja/20220405-CdTe