研究実績の概要 |
シンチレーターで検出する現行の放射線生体イメージングではエネルギー(波長)分解能が低く、in vitroの蛍光イメージングで行われるマルチプローブ・イメージングは困難であり、一般に空間分解能も低いのが現状である。この課題を解決するために1)宇宙観測用に開発されたエネルギー分解能の高いカドミウム・テルライド(CdTe)半導体検出器を用いる、2)宇宙観測で用いられるスペクトル解析方法を用いて複数核種を定量的に正確に同定する、3)250μm程度の(SPECTとしては)超高空間分解能が得られるコリメータを用いることで、高空間分解能多核種生体イメージング法の開発を試みた。 4年間の研究期間において、in vitroの系でSPECTの性能評価および宇宙観測におけるスペクトル解析法を応用した新たな解析法の実証実験を行い、SPECTでの多核種イメージングにおける新たな手法を確立した。さらに3つの異なる核種で標識された3種のトレーサーを用いた生体イメージングでもこの手法が有用であることを示した(Yagishita, et al. Nat. Biomed. eng. 2022)。次に具体的な研究課題として、センチネルリンパ節への微小リンパ節転移モデルを構築し、腫瘍トレーサーとリンパ流路トレーサーを同時に使用した生体イメージングを行った。700μm大の微小なリンパ節転移巣とリンパ流路を生体イメージングすることができた(Yagishita, et al. Sci. Rep. 2023)。 この研究の発展系としてCdTe検出機を搭載しマウス全身を撮像できる2次元イメージャーを作成した。これによりマルチトレーサーでの薬物動態イメージングやアルファ線放出核種であるアスタチン-211標識薬剤の生体イメージングが可能となった(Yagishita, et al. bioengineering 2024)。
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