研究課題/領域番号 |
20K16694
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
川嶋 広貴 金沢大学, 保健学系, 助教 (70775577)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | コンピュータ断層撮影 / computed tomography / 高解像度 / 四肢 |
研究実績の概要 |
コンピュータ断層撮影(CT)画像の解像度は,X線管の焦点サイズや検出器の開口幅およびそれらの幾何学的配置によって決定されるため,全身を撮像対象とする汎用型CT装置では,被写体と検出器が離れる“拡大ジオメトリ”となり,解像度の向上は困難である.そこで,汎用型CT装置の検出器の上に高精細検出器システムを構築し、被写体に検出器を近づける“近接ジオメトリ”とすることによって解像度を飛躍的に向上させることができる.本研究課題では,この撮像方法を臨床応用するための技術開発を行う. 今年度は,専用のガントリ製作および寝台を動かしながら被写体に対して螺旋状にデータを取得するヘリカルスキャンの実施に取り組んだ. 開発システムは,既存のCT検出器とともに据え付けた検出器も回転するため,安全面に配慮する必要がある.そこで,検出器部分等を覆うためのガントリ構造として,汎用型CT装置に取り付け可能で,軽量かつ衝突時の衝撃を吸収できる薄いアクリルを素材に用いた.CTスキャンを行う中心部分の筒は可動型とすることで,大きさおよび設置時の微調整を行うことができるように工夫した.これによって,検査時における被験者の不安軽減および衝突時の安全性を担保できることを確認した.次に,寝台を動かしながら螺旋状にデータを取得するヘリカルスキャンを行った.既存のCT装置の寝台を活用し、ベッドの動くタイミングに合わせて開発システムでもデータ収集を開始することで,体軸方向に連続した投影画像を取得することに成功した.このヘリカルスキャンの実現は,これまで撮像範囲が6.8 mmに限られていたものを飛躍的に改善することができるため,今後の発展には不可欠な技術である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画とは順番を入れ替え,ガントリ製作およびデータの収集を優先的に行うことにした.その結果,専用ガントリの製作および実験データの取得に成功したため,おおむね順調に進展していると結論付けた.データ取得が十分に可能であることが確認できたため,今年度予定していた画質評価については次年度に行うこととする.
|
今後の研究の推進方策 |
今年度に取得した投影データについて,補間計算によるCT画像再構成技術を構築する.また,得られたCT画像についての画質評価および四肢を専門とする整形外科医師とディスカッションを行い,開発システムの臨床的有用性を模索する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響により,参加を予定していた国際学会および国内学会がweb開催へと変更になり,旅費の出費が無かったため,次年度使用額が生じた.また,当初予定していた散乱線除去グリッドの購入については,企業よりサンプル版を頂戴した.しかしながら,この余剰分については,CT画像の解像度評価用実験機器の破損が生じたため,その製作費として計上した. 次年度には,高度なコンピュータ演算を行うための備品に加え,CT画像診断および画像再構成に関連する専門図書の購入を行う予定である.また,新型コロナウィルスの状況次第では,国外および国内の学会に参加する.
|