医療画像用のヴァーチャル・リアリティ(VR)は、本邦においても手術支援に用いる試みが行われるなど、既存のCTやMRIなどを処理・再構築した、新たな医療画像として注目を集めている。本研究では、通常の3次元(3D)の医療画像を用いるVRではなく、4次元(4D)の動態撮影が行われた医療画像をVR化することで、主に呼吸器や循環器等の各種病的運動(奇異性運動)を新たに、かつ深く認識・可視化できるか、探索することを目的とした。 結果として、以下のような疾患の4次元VR観察を行い、小数例ではあったがそれぞれで興味深い結果が得られている。慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:COPD)の呼吸運動(特に呼吸に伴う横隔膜や心臓の奇異性運動)、肺癌に伴う主気管支完全閉塞(胸郭や横隔膜は呼吸時に運動をするものの、肺への空気の出入りは存在しない)、心臓弁膜症術後( 経カテーテル的大動脈生体弁植え込み術:Transcatheter Aortic Valve Implantation:TAVI)の大動脈弁の運動、などを対象に4次元CTをVR変換したものを観察した。 さらには、VRの「没入性」を広く医学研究者に体感してもらうべく、複数回のVRの体験イベントを横浜市立大学内で開催し、放射線科医、循環器科医、医学生などに上記の4次元CTに基くVRを実体験してもらい、「各々の疾患において病的な運動が確かに存在する」ことを研究代表者以外にも認知してもらう契機を作った。
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