研究実績の概要 |
クローン病(Crohn’s disease, CD)は腸管特異的に炎症が生じ狭窄や穿通/穿孔をきたす原因不明の疾患である。狭窄には浮腫による炎症性狭窄と線維性狭窄があるが、両者は治療法が異なるため鑑別可能な画像検査の確立が望まれる。本研究ではCDの狭窄における3次元 (3D)超音波検査所見による壁肥厚、血流増加、組織弾性のパラメーターと病理組織学的な線維化・炎症による浮腫や血管新生・炎症細胞浸潤、免疫学的なサイトカイン、成長因子といった病態を示唆する所見と の相関関係の有無を立証する。これにより低侵襲にCDの病態を把握し、腸管狭窄に対する適切な治療を行うことが可能となる。炎症性狭窄、線維性狭窄の鑑別方法として3D超音波のパラメーター(壁肥厚、血流、弾性)の有用性を証明することを主要な目標とする。3D超音波で狭窄を鑑別できれば超音波で治療方針を決定でき、超音波で予測した免疫学的変化はCDの病態解明に役立つ。また、3D超音波は腸管線維化をきたす免 疫反応のin vivo イメージングへの応用が期待できる かもしれない。超音波画像診断は病理診断とは異なり、 頻回に貫壁性に継時的評価が可能であるためCDの病態や予後を予測する重要なツールとなる可能性があり、安価であることから医療費削減にも有益である。2024年3月まで症例を38症例を蓄積し、今年度中に解析し学会や論文に経過を報告する予定である。また、一部のデータを使用した腸管の炎症重症部位の硬さ(エラストグラフィーにて測定)が 生物学的製剤による寛解導入療法の効果不良を予測する因子であることを確認した。
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