研究実績の概要 |
放射線治療において、機械学習を用いることで、放射線治療時に一定確率で発生する有害事象の頻度や重篤度を予測する、あるいは予測精度を向上させることを目的に本研究を始めた。まず食道がんに対する放射線治療における心嚢水貯留の確率計算や、前立腺がんに対する重粒子線治療含むマルチモダリティ間の比較に機械学習の結果を用いるなど、有害事象予測モデルの有用性を示すことができた。他方、CTなどの3次元の画像情報と3次元の放射線線量分布を元に作った有害事象予測モデルに関しては、食道がんに対する放射線治療のデータセットや、前立腺がんに対する密封小線源治療のデータセットを用意して挑戦したが、どちらも一定の効果を証明することはできなかった。放射線治療における有害事象予測に用いられる指標としては、CTで臓器を囲んだ輪郭内の三次元の線量分布を1次元に圧縮したもの(Dose volume histogram, DVH)があり、これは3次元情報からすると下位互換と考えられるが、それでも3次元情報に基づく予測の精度が得られなかった要因のひとつは、パラメータ数とデータ数を考えたときに、ディープラーニングなどパラメータ数の多いケースではより多くのデータ数が必要で、本研究ではそれに相当するデータが得られなかったこともあると考えている。もしこれが要因であるならば将来的にデータセットを拡張することができれば可能性はあると思われる。
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